2008年11月

星に祈った。

2008年11月30日(日曜日)

 明日から倉石隆特別展が始まる。夕方から現状の片付け。ケースの搬出。絵画展示。照明の調整などを外部の方の力も借りて済ませた。

 

陶磁器の4ケースを残して初めて全館の壁面に人物画を架けた。向かって左側に女性の、右側には男性の絵が合計20枚。奥のホールまでぐるりと架かったので館内にはうねりに似た絵画の迫力が響いているように感じた。

 

見渡すとあらためて倉石隆は「人間の画家」、の感慨がした。一点一点には人間を描く困難とともに、描き切ったすがすがしさが漂うことに気づいた。4点の陶齋の陶磁器が絵画と静かに調和していて嬉しかった。

 

夜遅く美術館を閉めて外へ出た。雲が地上の光を写して白く浮かび、切れ間にオリオンの星が晴れやかに輝いている。辛い人の悲しみが少しでもやわらぐように、心から祈った。

イルミネーション

2008年11月25日(火曜日)

 樹下美術館の前にスタッフがクリスマスイルミネーションを飾りました。夕刻から降り出した雨のなか静かで美しい。連休に来訪した大切な身内が午後に帰った。どうかまた元気で頑張ってほしい。

 

 

   

「倉石隆特別展」のお知らせ

2008年11月22日(土曜日)

 すでに初雪もあって12月も間近となりました。果たして今年はどんな冬、そして雪になるのでしょうか。 

さて12月は倉石隆特別展と名うち、陶芸ホールを含めて全館に倉石隆作品を架けることに致しました。一年に一度くらい、やや手狭の絵画ホールを脱してのびのびと絵を飾っみたいと考えたからです。全館と申しましても小さな美術館ですから合計21点の油彩です。

 

展示は少し趣向をこらして、人物画を男女に分けて並べることにしました。氏が人物を多く描いたことの真意は詳らかではありません。しかし当館の作品を見ますと女性には畏怖、憧憬、憐憫、謎などが、男性には孤独,不安、必死さ、道化表象などが感じられます。
絵を通して「よろしければ皆さんと共に人物たちを眺め、語りましょう」と、倉石氏が話しかけているような気がします。

 

十分な作品点数ではありませんし何かとせわしい時節ですが、どうかお暇を見てお越し下さい。なお挿絵本の展示は継続しています。

 

以下の写真は展示の一部です。左に女性を右に男性の絵を並べました。 

※展示期間は12月1日(月曜)から12月28日(日曜)までです。大雪の日は念のためお電話をください。【電話】025-530-4155

   
イブ 黄昏のピエロ
   
    Dsc_2808_5   
北の人々 めし
   
女性像 異国の人
   
    
スフィンクス 馬上の人

せん妄

2008年11月19日(水曜日)

 ひどく気温が下がってみぞれ交じりの荒天となった。いよいよ越後の冬の始まりだ。荒れ模様の夜8時すぎ、あるお宅から電話があった。ショートステイを利用中の夫が、昨晩から寝ないで騒ぎ出したので家に帰された。家でも妄想にとらわれて大声や怒鳴りが止まず、診て欲しいという訴えだった。

 

ご本人は、肺疾患のため在宅で酸素吸入をしている高齢の男性で、奥さんと二人暮らし。酸素療法では鼻に付けるチューブが鬱陶しくて、外したがる患者さんは少なくない。しかし一旦外すと酸素不足のため、特に高齢者では意識の濁りを生じてひどい症状が現れる場合がある。今回の方は施設でしばしばチューブを外し、介護士さんも苦労したようだ。この日ご本人は、介護士さんが付けたチューブを噛み切ろうとして、自分の指まで噛んで負傷したという。

 

ところで浅い睡眠や一定の酸素不足,発熱、時に薬剤で生じる意識の混濁・混乱はせん亡と呼ばれる。かって99才のおばあさんは、庭に何十匹ものサルが攻めてきたと言って、長いホウキを手に一人で立ち向かった。ひるね直後のせん妄で、夢と現実の混乱が鮮明な幻覚を生んだと考えられた。往診に伺うと、庭に面したガラス戸はすべてめちゃめちゃだった。家族は呆気に取られていたが、ふとんに戻ったご本人は、サルを退治したと意気揚々だった。普段寝てばかりいる老人でも、強い観念に襲われると信じ難いエネルギーを発揮することに驚いた。

 

今夜の電話の向こうでは怒鳴り声がして、奥さんの声は震えていた。ふだん電話の背後に聞こえる怒鳴り声や泣き声、あるいは悲鳴は緊張する。今夜は、出掛ける前に「優しくそばに座ってみてください。そしてそっとチューブを付けてください。駄目でもくりかえして」と告げた。患者さん宅に着いてみると家は静かだった。「いま寝ました」、奥さんの声がまだ少し震えていた。チューブはちゃんと付いていた。数十時間も眠っていなかったのだ。本人は布団にくるまり丸くなって眠っていた。
 医療には薬の要らない場合もあろう。何かあったらまた電話して、と告げて出た。あられ混じりの風雨のなか、奥さんが傘を差して車まで付いてくださった。

続・大手町のムーンリバー

2008年11月15日(土曜日)

 前回「大手町のムーンリバー」でジャズにまつわる拙い思い出を書いた。書きながらある本が気になっていた。「モダンジャズ入門 THE FIRST BOOK OF MODERN JAZZ」。高校3年生の時に朝日新聞の広告を見て買った本だ。わくわくする記事、写真のプレーヤーの格好良さ、飽かず読んで見入った。ところが、これが高校、大学、そして帰郷から今日までおよそ50年、手元にあったと思えば消え、消てはまた出てくる不思議な本だった。

 

先日の記事を書いた後、案の定本棚に無いことが分かった。そういえば長く見ていない。今まで何度か徹底した押し入れの整理をしたが、この本の記憶はまったく無い。どこへ行ったのだろう、代わりがあるのかネットの古書検索を試みた。検索で出たのは重版であまり興味を持てなかった。年のせいだろうか、若い自分に繋がる本がよけいに必要に思えた。

 

実は古い我が家には9カ所の押し入れがある。多すぎて何かと探し物はおっくうになる。ところが昨日、駄目もとでその一つを探してみたところ、案外あっさり出てきた。10年以上も前に積み上げた古い医学雑誌の中に埋もれていた。ネットによれば、当時詩人や知識人たちが求めた本とあった。その初版を高校生の自分が持っていたなんて、出てきてくれてことさら嬉しい。

 

4/6版の可愛いサイズ(18,8×12,8㎝)ながら、いちおう角背にミゾが施されたハードカバーだ。ひどく傷んでいた背にノリをすり込んでヒモで縛って直してみた。本日ヒモを解くと見た目は今いちだが、かなりしっかりしてきた。
因果な本はこれまで何度も消えては現れを繰り返した。昔から自分は大事なものほど失くしてしまう傾向がある。だからいつかまた消えてしまいそうで怖い。今度ばかりは油断しないようにしよう。

内容の写真は「モダンジャズ入門 THE FIRST BOOK OF MODERN JAZZ」/油井正一編・荒地出版社・1961年初版から。

発見捕縛 開放
   
        
フォーマルのMJQ 若き日の大御所たち

大手町のムーンリバー

2008年11月11日(火曜日)

 1962年、上京した年の正月、私は生まれて初めて憧れのジャズ演奏を聴いた。場所は大手町の東京サンケイホール。ホレス・シルバーのクインテットだった。当時モダンジャズは世界で縦横に場を広げ幸福な時代を迎えていた。ホレスの演奏はうぶな自分にもNica’s Dreamの華やかな激しさを伝えた。
公演が終わって頭を冷やすため、人影の無い正月のオフィス街を歩いた。歩きながらムーンリバーのメロディーを口ずさんだ。あたりは、映画「ティファニーで朝食を」で見た朝のシーンに似ていた。ビルの谷間の誰もいない細い路地へわざと入って、都会っていいなと思った。

 

サンケイホールの正月は、前年にアート・ブレーキーが公演していた。以来しばらくきら星のごときジャズメンたちの公演が続いた。キャノンボール・アダレイ、ホレス・シルバー、アートブレーキーの再演、、、。

 

大手町で地下鉄を降りてサンケイホールの外階段に並ぶ。ニューヨークから着いたばかりのジャズマンの演奏が聴けるのだから、正月の寒い階段も平気だった。演奏は音で世界を埋め尽くさんばかりで、スーツを決める黒人プレーヤーたちは格好良かった。そして終わるとガランとした大手町を歩き、決まったようにムーンリバーを口ずさんだ。誰も居ないビル街を独り占めしているようで楽しかった。ジャズのため何度か正月に帰省せず、親に叱られた。

 

ところで昨夜11時前、テレビで「ティファニーで朝食を」の最後のパートをやっていた。陽気なシーンもいいが、悲しげなヘップバーンは本当に素晴らしい。そしてエンドタイトルへ、ムーンリバーが流れて静かな朝のニューヨークが写る。あらためて正月の大手町は似ている気がした。私は海外旅行の経験がほとんど無く、もちろんニューヨークへも行ったことがない。MJQ、セロニアス・モンク、カウント・ベーシー、ヘレン・メリル、オスカー・ピーターソン、そして秋吉敏子もだったかな?正月以外もジャズを聞きに通った大手町。そこは自分なりのささやかなニューヨークだったのかもしれない。

芝居の同窓会

2008年11月8日(土曜日)

 今夕10年振りとなるある同窓会に出席しました。参加者は22才から70すぎの方まで大変多様です。ちょうど10年前、旧大潟町の素人劇団「潮騒」で「人魚塚」を公演した仲間です。10年たつと6年生だった子役さんはもう社会人になっていました。

11場の人魚塚は大潟町と頸城村で計3回公演され、いずれも大入りでした。経費も乏しく衣装・舞台みな手作り。仕事や学業の傍ら多くの方が役者、ナレーター、大小道具、衣装・メーク、照明、音響に参加されました。さらに本読みから最後の公演までの二年間、作家故石堂秀夫氏や舞台装置と詩人の大瀧満氏および高校演劇の指導者満田誠二氏には大変お世話になりました。そして暗転のなんたるかも知らずに台本を書き演出をしたのは不肖私でした。

 
何でもそうでしょうが、稽古から公演まで必死の演劇は素人であっても文字通り死ぬか、と思うほど消耗します。しかしその後10年、かつての努力と成果は、それぞれの人生に何かしら貴重な心の種として生き続けたように思われます。今夜は、当時の座長を中心に同窓会であり、叶うならば再び公演を、という会になりました。もしかしたら新たな芝居に向けてスタートしたのかもしれません。

 

医業の傍ら美術館を営むなど私の不遜は如何ともし難く思っています。患者さんと美術館を大切にして、さらに地域の皆さんと新たな必死が始まるのでしょうか。緊張感に包まれて何か「もののふ」めいた心境で帰路につきました。10年前の懐かしい写真を掲載しました。

 

   
希望館の公演 人魚塚/おなみの告白
   
磯吉とおなみ 嘆くおみよと母
   
   
捕り物 子役さんたち
   
   
照明・音響・スクリプターさん 今夜の同窓会

額作り

2008年11月6日(木曜日)

 樹下美術館では12月1日から一ヶ月間、館内の壁面すべてに倉石隆の絵を架けることにしています。ふだん絵画スペースが小さ目ですので一年に一回全館を使うことにしたわけです。
といっても全体が小振りな美術館です。陶芸ホールに追加できるのは14点。全部で23点ほどの油彩です。この間、陶齋作品は4,5点を選んで配置する予定です。絵画と陶芸がうまく引き立て合う事を願ってレイアウトを考えたいと思います。

 

ところで展示を予定している作品には額が傷んでいたり、展覧会用の仮縁(かりぶち)のままのものが何点かあります。
そこで今日午後、お世話になっている大島画廊さんでそれらの額を新調することにしました。いつもながら額の選定は楽しくも難しい作業です。当然額ばかりが目立っていては駄目。あまり同じ風合いでも妙味に欠けます。上手く選んで作品がほどよくまとまり、願わくば格調も高まれば、と思いは尽きません。

 

額といえば10月に訪れたピカソ展、フェルメール展ともに額はあっさりして地味に感じました。ただし地味でもお金は掛かっているのかもしれません。かたや当館はささやかな個人です。あまり費用は掛けられませんが、フレーマーさんと精一杯選んでみました。ご来館の際にはぜひ額の調子などもご覧ください。

 

   
額の制作現場

 

秋の朝

2008年11月5日(水曜日)

季節風も一休み。今朝の 美術館は穏やかな朝日を受けて、小鳥や木々とともにゆっくり暖まっていくようでした。

 

シジュウカラ ヤブコウジ
   
   
東の壁 南の道

菱ケ岳

2008年11月1日(土曜日)

 午後から晴れ間が出ましたので母と上越市安塚区にある菱ケ岳を見に行きました。以前から続いている秋の年中行事です。昔はブナ林の道を杖を頼りに100メートルを歩いた母も二度の骨折で今は車椅子。さらに、山の紅葉を見るには上を向く必要があります。しかしこれが年寄りに辛いので,おのずと車中で昔話が続きました。 以前、昔話はイヤでしたが、今はいくら聞いても飽きることがありません。

 

たとえば、母の故郷である肥前大村藩の奥方が道中で湖畔に咲いてる花を所望した。お女中が花を取りに向かったがそれきり帰らなかったという。水に沈んだの?と聞けばそうかも知れないと言い、何処かへ逃げたの?と聞けばそうかも知れないという答。こんなゆるい問答が楽しく、大村藩というエキゾチズムも新鮮なのです。
別の話では、生家の近くにほこらがあって、寝小便にご利益があった。ある日、五つ違いの幼い弟が、たまたまほこらに参る妙齢の女性を見た。女性が帰るのを待って弟がほこらへ行ってみると24ヶのおだんごが供えられていた。そこのほこらでは年の数だけお団子を置いて願をかける。弟は得意げに知らせたが、姉である母は気の毒で弟のようには笑えなかった。

 

こんな話を沢山聞いて帰りました。3時間余の道中の小用を心配して、妻は予め母の尿パットを特別大きいものにしましたので助かりました。帰ってから「ずいぶん私も惚けたでしょう」と93才の母。確かに自分の話はよくできるが、人の話の理解はかなり落ちてしまった。しかし私はそれで十分だと思っています。

 

NPOゆきのふるさと安塚の平野さん、以前ご案内いただいた花をまた見てきました。棚田の整備も進みましたね、頭が下がります。

       
菱ケ岳 遠く米山
   
    
リンドウ 梅鉢草(ウメバチソウ)
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