桑取(くわどり)

2009年3月22日(日曜日)

  春弥生、語感は優しいが気象は少々荒っぽい。初夏の陽気が翌日には北風に,それが南に戻ったと思えば今日は春雨から強風。その夕刻の小雨の中で、30株ほどのチューリップの芽と5株のツボザンゴを植えた。何組かのお客様にクリスマスローズの庭を誉めて頂いて嬉しかった。

 

 そして今夜の天地人。緊迫した状況のわりに何故か全体が軽い。特に景勝方はどうしてなのだろう。そんな中で桑取は良かった。桑取の人物達は一種幻想的で、なかでも村おさの斎京三郎右衛門と母に物語の力を感じた。草笛光子の健在は心強かった。

 

 桑取は古来の諸行事が伝承されていて民俗学の見地からも注目される地域だ。特に写真家濱谷浩氏の「雪国」で知られた。私の近くに桑取出身の人もおられ、桑取というだけで貴重に思えてしまう。謎めいた魅力に惹かれて30年ほど前の早春、桑取谷を車で訪ねたことがある。有間川(ありまがわ)から桑取川に沿って山あいを進むと最後にわずかな平地が現れた。歴史を感じさせる民家が点在していて、小ぶりな田んぼとポツンと立つお堂が印象的だった。

 

 林道をさらに山へ向かうとすぐに道は雪に閉ざされた。海辺から川を遡行するのに比べて、頸城平野へ抜ける山道は険しくて大変だろうと思った。天地人の現季節は5月中、下旬か、残雪があってもおかしくない。兼続の道中は険しかったにちがいない。

 

 手もとの「雪国」(著者:濱谷浩 発行所:毎日新聞社 昭和31年3月31日発行。題字は詩人堀口大学)

 

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 雪国のページの一部見開き。濱谷氏は昭和15年から10年間桑取へ通われた。桑取(詳しくは当時の桑取村西横山)の小正月行事は昭和29年に国の無形文化財に指定されたという。当写真は同地区におけるサイの神行事での一服のようだ。これを見ると大河ドラマの考証に真実みをおぼえる。

 

※文中の堀口大学、濱谷浩両氏は疎開や取材で高田市(現上越市)に住まわれたことがあります。樹下美術館の常設展示作家・齋藤三郎は両氏と親交を結びました。

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