2014年7月2日

病診連携の根底 挨拶する百合。

2014年7月2日(水曜日)

医療には病診連携という言葉があります。患者さんをめぐって病院と開業医が円滑に連絡して対応するという概念です。
ある意味当たり前なことなのですが、慢性疾患や軽い疾病の患者さんまで病院に集中し過ぎて強調された言葉でした。
限りある医師数で長年に亘る超過密なスケジュール。
病院は本来の専門的機能を発揮することに支障を来し、ついに交通整理が必要になりました。

開業医師による予約。
開業医師からの紹介状持参。
安泰した患者さんを病院から開業医へ逆紹介。

特に上の二つがいわゆる病診連携の要として推移することになります。
動きはすでに20年ほど前からあったように思われますが、
平成12年、国による制度上の後押しもあり病院主導でより熱心に進められました。

ところで病診連携にはもう一つの重要な側面があります。
私たちが相談を受けた救急、急病の対応です。
当然予約などの猶予もありませんので電話で病院の受診許諾を確認します。
かって時間外、夜間、深夜の病院の体制はかなり限定されていました。
しかし今日では病院の努力で急所となる科の体制が整えられ救急への対応が向上しました。

大変昔の事ですが、夜間の救急用件で病院に電話をすると、まず医師に繋がるまで数分、時には10分以上。
繋がってもベッドが一杯、担当科の医師が居ない、などの返事で別の病院に同じような電話を繰り返ざるを得ません。
時には明らかに病院が引いていると感じることもありました。
急病発症の方の応急処置をしながら電話の最中に、目の前の患者さんが亡くなるケースもありました。
このような辛い過去をを経てようやく今日の救急体制が築かれるに至りました。
この過程で各病院の救急担当医、救急隊責任者、行政、医師会を交えた協議が根気よく続けられたことは言うまでもありません。

さて先日のこと、ある会社から社員が急に全身に蕁麻疹が出て少し息苦しいと言っているという電話がありました。
電話から呼吸困難を伴う危険なアナフィラキシーショックへの移行が危惧されました。
迷うケースですが、私は病院への連絡を省略し「すぐに○○病院へ向かって下さい」と返事しました。
○○病院は最も近い病院です。
いかなる病院でもこのケースを断るはずがありません。

会社へ指示の後すぐに病院へ電話をしました。
電話の医師は「わかりました、どうぞ」と明瞭に返事され、
「ありがとうございます」と最後に仰ったではありませんか。
声の感じから若い医師だと思いました。

なんとスムースですっきりした対応だったことでしょう。
○○病院は小規模ですが院長の「地域医療」への理念が素晴らしいのです。

それから数日後、ある大手病院の地域連携(病診連携)担当の方達が交替されたことで挨拶に来られました。
別れ際に先日の医師の「ありがとうございます」の一言を話し、
「この言葉をお互いが持つことも大切な病診連携ではないでしょうか」と伝えました。

言えば素晴らしい効果が生まれるのに、なかなか言えないのが「ありがとうございます」ですね。

テッポウユリ
本日樹下美術館のあちらこちらのテッポウユリはそよ風に揺れながら、
皆で挨拶を繰り返していたのです。

 

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