2016年9月21日

カフェの図書の入れ替え その1。

2016年9月21日(水曜日)

カフェの図書を十冊ほど入れ替える予定ですので、何回かに
分けてご案内致します。

以下は明日から置かれる本です。

 

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↑「写真ものがたり 昭和の暮らし1 農村」
著者須藤功 農山漁村文化協会 2004年3月10日発行。

草の道、藁葺きの家、一家総出の手仕事、働いて働いて働く
一年、子は親の傍らで手伝い遊び育ち、近隣縁者が助け合い
祝いあった農村。
一部は昭和50年代中頃まで続いたこうした姿は“貧しくとも
豊か”と言われるように、あるいはそれ以上貴重な異文化の
如く記録されている。
私たちは、日頃忘れ物をしては探したり取りに戻る。
克明に撮影された昔の農村の一枚一枚の写真には数え切
れないくらいの忘れ物が写っている。

 

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↑「写真ものがたり 昭和の暮らし2 山村」
著者須藤功 農山漁村文化協会 2004年6月15日発行。

山村は農村よりも暮らしが複合的である。山村とは言え一部
に棚田を有し、山の木を切り運び植林し、獣や川魚を獲り、
炭を焼き、焼き畑を行い、ヒエやソバを栽培し、山ほど山菜を
採り険しい山坂を歩く。
いつ何処で何が採れるか、子供もよく知っていて、山に入ると
「これは来年の分」と言って取り残しをするのも山村の智恵だ。
危険が多いため農業よりも役割分担などに厳しさが見られる
が、神への祈りと感謝そして祝いごとは農村と良く似ている。

上掲の二冊から、農村も山村も化学とガソリンと電気の導入
で、仕事は様変わりし、生活様式や交通手段も変わった。
筋肉と智恵と忍耐で助け合いまた喜びあった一昔前までの農
山村の暮らし。
戦や学芸ばかりが歴史ではないことを深く知らされる。

 

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↑「文豪の家」
著者(監修)高橋敏夫、田村景子 エクスナレッジ2013年4月
30日発行。

昔の人は今より多く住処を変える。転勤族でもないのに作家た
ちは次々よく替えている。
本書には生家をはじめ最も愛した家を中心についの住処まで、
太宰治から若山牧水まで36人の文学者の家と室内の写真が、
時に本人自身とともに並ぶ。
しもた屋から豪邸まで様々で、純和風と和洋折衷が多い。
故郷でも仮住まいであっても、家は作品にこまやかな影響を及
ぼしている事が分かる。

 

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↑「文士の時代」
朝日新聞社 1986年4月25日発行。

作家を撮影した写真集で、接近したポートレートもあるが、
多くは書斎や庭や、何かの風景などと共に撮影されている。
ゴルフ場の石川達三、油絵を描く田村泰次郎、破れ障子の
前の檀一雄、大きなライオンに餌をやる火野葦平、郊外で子
供に囲まれる坪田譲治、枯れ野でヤギを散歩させる伊藤整、
競馬場の舟橋聖一、着物姿が似合っている吉行淳之介、
大岡昇平、大佛次郎、亀井勝一郎そして高見順、私も一応
座ってみた銀座のバー「ルパン」のカウンターの太宰治。
83人もの文士たちが有する、時代と生い立ちに翻弄されつつ
ペンを執り続けた気骨と、確固たる個性に加えて滲む独特の
エレガントさは一体なんだろう。

昭和時代、テレビやジャーナルにはしばしば作家が登場し、
その人の本を読んでいなくても名前と顔くらいは皆知っ
ていた。
彼らには一種の迫力があり、着物や帽子が似合い、酒場
、野末あるいは銀座などお好みの場所を有し、作品と共に
個人的な話題も賑やかだった。
私だけの見解かもしれないが、今や文士は死語になりつつ
あり、まず文豪を聞く事も無い。

この30年足らず、平成はそれ以前の長い時代とは異国のよ
うに変った。
すみずみまで「便利で美味しく」なったが、病む人も多いこと
から、果たして幸福かと言えば、それだけは一概に言えない。

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