倉石隆の「落日」 氏の悲喜。

2017年7月19日(水曜日)

過日の樹下美術館10周年の会に出席下さった倉石隆氏のご親族が
以下の「落日」を携えてこられ、ご寄贈頂きました。

 

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「落日」(F6サイズ:縦横およそ41×32センチ)
瞑目する女性を光背の如く落日が包んでいる。
1977年少し以前に描かれた作品と言われています。

多様な人物を描いた倉石氏の作品のなかで特に静かな作品です。
静けさは深い悲しみそのものであり、落日の陰影が一層それを純化
しているようです。

似た雰囲気の作品にバルザック作「従兄弟ベット」の挿絵に用いら
れた版画があります。

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↑当館で収蔵している「従兄弟ベット」の登場人物の一人ユロ
夫人の挿絵原画(1970年6月29日初版の河出書房挿絵用)。
目を伏せて愁い悲しむ女性が描かれている。

倉石氏の人物画はあたかも〝笑顔の人物はほかの人に譲る〟と主
張している如く微笑む作品はわずかです。
真に迫りたいと述べる作者はどうしても甘美な美人は描けない、と語
っています。
なるほど私が知る範囲で微笑むのは少女たちの版画などかなり限ら
れてるように思われます。

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『大きな髪飾りの少女」 1983年。
この少女の笑みは一種迫真ではないでしょうか。

人は一日中(あるいは一生)笑って過ごせるわけではなく、倉石氏のよう
にあえてそれを控えるという画家がいても良いのではないかと、考えるの
です。
あるいはそのことが倉石作品の貴重さ、見所ではないかとj、「落日」を見
てあらためて思いました。

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