2010年6月2日

貴重な明治生まれ

2010年6月2日(水曜日)

  美術館たる者、たとえ小館であっても図録一冊出せなくてそれとは言えない。このところ決めた期限が迫って懸案の制作に追われる毎日となった。いつしか大小400点に迫った分量もあるが、日頃の整理の甘さを痛感させられている。

 

 それで毎日のように明け方まで格闘が続く。若ければもっとはかどるのに、一日は35時間くらい、一ヶ月は45日くらい欲しい、など考えるまでになった。それに何とかノートも、、、。

 

 さて一先ず色々置いて、私が在宅でフォローしている方に明治生まれの人が4人いらっしゃる。いずれも女性でそのうち3人は100才を越えられた。4人のうち3人の方が杖で室内を歩行され、デイサービスへも通われる。お一人は押し車を使って近隣を散歩される。

 残念ながら今日訪ねた方は骨折後に寝たきりとなられた。よくうとうとされているが、私たちが訪ねると一転して言語が冴える。今日の話をつないでみると次ぎのようになった。

 

 「おや先生、相変わらず惚れ惚れするようないい男ですねえ。私がもっと若ければ本当に惚れるところですよ。
  これでも学校時代の私は飛び競争の選手で、試合で直江津や柿崎までよーく歩いて行ったもんです。マイクロバスなんて無かったですから。
 その時の先生がまたいい男で、私を好きだったらしいです。しかし私はまだ若かったからそんなことは分からなかったんです。今なら惚れるのに残念だったですよ、本当に。 しかし先生は男前だ、お帰りは気をつけて!先生もお元気で!」

 

 すらりとして長身、言葉もきれいで、いつも似たようなことを仰る。要は褒めてやるからさっさと用事を済ませて帰りなさい、という風にも聞こえて、さすがだと思う。

 よく面倒を見られている息子さんと、同行の看護師がくすくす笑いながら聞いている。

 

 今日は明治生まれの女性から多めに褒められて疲れが和らいだ。それにしても彼女たちの存在は非常に貴重だ。お会いしてお話できるのを幸せに思う。

 

  ミヤコワスレ ヒメサユリ 
樹下美術館隣接の庭のミヤコワスレ 同じにヒメサユリ(乙女百合)
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