ウクライナは可哀想な国 ふと高校時代の「Animal Farm(動物農場)」が蘇る 当時の二人の恩人。

2022年3月3日(木曜日)

「コルホーズ ソフホーズ」。高校時代の地理でY先生が何度も口にされた言葉だった。
そのたびに「ウクライナ」も。
以来肥沃で広大な地にコンバインが似合う農業地帯は、寒い観念が先立つソビエト連邦の中で唯一温かさと豊かさのイメージがあった。

そして同じ高校時代、月2回通った英語教師のもとで読んだイギリスの作家ジョージ・オーウェルの「Animal Farm(動物農場)」。このたびのウクライナ侵攻でそれも思い出した。

「Animal Farm(動物農場)」の話はこうだった。
酒浸りの農場主のもとで辛く理不尽な生活を強いられる家畜たちが反乱を起こし、平等で主体的な自治を目指した顛末の物語だ。
“2本足(人間)は悪、4本足(動物)は善”、“ベッドで寝てはならない”、“動物を殺してはならない”など7項目のスローガンが掲げられ、そのもとで動物たちは懸命に働き成果も上がってくる。
しかし農場は、演説が上手い手下と、子犬を自らの番犬に育て上げたリーダーの豚に牛耳られるようになる。リーダーと同様、豚たちは特権的で、かって人間が住んだ家で番犬に守られながら、禁止した酒まで飲み贅沢な生活をはじめる。
彼らは計画書や書類を書いては焼き捨てることを繰り返す。あまつさえ上層の豚たちは収穫を人間と取引し、最後に2本足で歩くまでになり、当初の理想は失われ、事態は以前より遙かに悪化する。

読んだ当初は、人と動物の風刺物語程度に感じ、さほど面白く無かったが、次第に深刻な真実が書かれていたことを知るようなった。

さて常に不条理を強いられるウクライナは可哀想な国だ。
帝政ロシア時代、広大な国の食糧を支えた農民は「農奴」として最下層の悲惨を味わされ、革命後はソフホーズ、コルホーズの名のもと国家管理される。
1932~33年にはウクライナを中心に人類史上最悪と称される飢饉「ホロドモール」が起きる。
外貨を稼ぐ為に農産物は輸出に回され、過酷なノルマと常態化した飢えに耐える農民をさらに飢饉が襲う。医師は農民を診る事を禁じられ、パンを食べられない農民は犬や猫や草を食べ、抗議する者は収容所送り、子殺しが拡がり、路傍に次々と死体が放置され、数百万から千数百万人が死亡したと言われる。

後の政権は飢饉は国全体で起こったもので、ウクライナに限られたことではないと弁明する。しかし同地方には以前より先進性と自由の気風があり、帝政やその後の共産主義体制に対しても批判的な空気が存在した。
それが気に入らなかったスターリンは策を弄し同地をいっそう深刻な飢饉に追い込んだといわれ、現在もそのいきさつは払拭された訳ではないという。

不条理を強いられるウクライナは可哀想な国だ。

黄色に実った大地と青空のウクライナ。

この色が国旗になっている。

ウクライナ国旗、ウクライナは可哀想な国だ。

侵攻はまさに現実であり、根源に優越欲求が染みこんだ確信犯的な行為にほかならない。
我が国の首相は難民を受け入れると明言した。大変だが何を於いても急いですべき救済措置であろう。上越地域に彼らが来ることがあるなら揃って歓迎しなければならない。

さてこの機にかねての願望、改憲を言い出す人はすくなくない。しかしその人たちはウクライナ侵攻のお陰ですと、ロシアにお礼を言わなければならない奇妙な立場に立つことになる。
勇ましければ良いというのでは軽くて小さなプーチンの量産でしかない。
ひるがえって首相の先の救済決意は理性的で有益、立場をわきまえた指導者として信頼に足りるものとして写る。
※赤文字、後日(3月12日抹消、無いつもりでお読みください)

改憲は誰が口にするかで性質と将来が全く異なる。どういう人がどんな言い方をするか慎重に見なければならない。

ところでこの度の侵攻で、「動物農場(Animal Farm)」を思い出し、検索するとスタジオジブリ版のアニメ映画があったので申し込んだ。
本日到着したので早速観た。

最初に指導者になった良い豚。
権力を志向する別の豚が飼育するどう猛な番犬に抹殺される。

同映画は伝説のイギリス・アニメーションスタジオ「ハラス&バチュラー」が1950年代に制作し、スタジオジブリ美術館が国内向けに上映、出版したもの。

「動物は他の動物を殺してはならない」は最後に「理由なく殺してはならない」に変えられるのが今さらながら恐ろしい。
公の大切な書類を燃やしてしまうようなリーダーは、数年前までどこかの国にもいた。気を付けていないと動物農場はどんな国でも簡単に生まれる。

前述の英語教師のもとで動物農場のあとバートランド・ラッセルジョージ・ケナンの随筆集が教材になった。内容を訳す以上に問題を考えることが重視されたと思う。
わけても、“今で言うwin-win”、“議論と多数決”、“偏狭の排除”、“粘り強い交渉”、“中庸(ニュートラル)の貴重”などを熱心に説いた当時40才の美しい教師。最後になると、“あなたは理系ではなく文系に進んだら”と言った。
※後日加筆→“熱狂の危うさ”も何度も出ました。
この人と、世間知らずの私に、物の大切さと世間の義理を説いた下宿のおばさんは大事な恩人。

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