背振嶺(せふりね)に

2010年7月21日(水曜日)

  背振嶺に腰うちおろし居し雲は 夕方負けて流れ染めつつ  
               (母の覚えのママ) 

 

 昨日の車中でもう一つ母から話を聞いていました。連日で恐縮を禁じ得ませんがどうかお許しください。

 

  昔話:背振嶺に

 弟を背負って登校していた母は後に九州大学の看護部に進学した。寮生活は思い出深く、小野寺内科の実習は充実していた。
 病院のことと言えば、内科の医師に背が高く若いA先生がいた。足を大きく振り出してゆっくり廊下を歩く姿が印象的だった。

 

 A先生から自作の短歌を見せてもらうことがあった。その中で背振嶺の一首をよく覚えている。背振山(せふりさん)は霊峰で、佐賀県と福岡県境にあったという。

 

 以上が昔話である。掲げた歌にはもしかしたら垢ぬけなさはあるかもしれない。しかし南国のとある日に、山と雲が織りなした旅情は鮮やかだ。同時に、その日窓外に目を転じていた若い医師がいたことや、彼の時間などに不思議なリアリティを感じる。

 

  時代は昭和7、8年頃か、深刻な不況と中国進出、軍国化など背景は穏やかではない。A医師はその後どうされただろうか。母のほうは学校を出ると時代に押されるように満州へ渡って行く。

    

背振嶺の夕雲は今でも美しかろう。

 

バラのカット

 

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