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今夕樹下美術館10周年の集い。

2017年6月25日(日曜日)

去る6月10日、樹下美術館は満10年を迎えていました。
樹下美術館には特別な日は似合わない、と日頃考えて
いましたが、皆様の後押しもあり本日10周年の集いを行
いました。

弦楽四重奏
若い親族に東京音楽大学の学生がいますので、会の最
初と最後にお仲間で弦楽四重奏の演奏をして頂きました。
初夏の夕べ、館内いっぱいに若々しく爽やかなアンサンブ
ルの調べが広がりました。

参会者様から心温まるお話をお聞きし感謝に堪えません
でした。
恥ずかしながら以下に小生の挨拶の要旨を掲載させて頂
きます。

ご挨拶
10年という歩みはあっという間でしたが、顧みますと何の
保証もないまま小さな舟で無謀にも未知の荒海へとこぎ出
したというのが実状でした。
しかし荒波にもまれるうち、いつしか何か貴重な潮流に乗っ
ていて、気がつけばすでに帰れなくなっていたというイメー
ジが浮かびます。
潮流は費用も労力もまま掛かりましたが、幸いにもそこに
は思ってもみなかった「張り合い」という風が吹いていまし
た。
幸運な潮流と風は以下のような事実の集まりではなかった
かと振り返られます。
倉石隆と齋藤三郎という親しみ易く貴重な作家に恵まれ
たこと。
設計家大橋秀三さんと久保田建築さんによって楽しく品
の良い建物に恵まれたこと。
樹下美術館を愛して下さる皆様の暖かな励ましのお力。
地域の文化のために日夜心砕かれている方々がいらっし
ゃるという心強い事実。
陰に日向に樹下美術館を心配して下さる心の友の存在。
最後に今日まで懸命に樹下美術館を支えてくれた美術館
と診療所スタッフの努力を挙げなければなりません。

ささやかな施設ですが、庭やカフェとの相性の良さと相俟って
昨今はわずかずつお客様が増えているやに聞いております。
また長く念願でした齋藤三郎と倉石隆の収蔵図録がそれぞれ
間もく刊行の運びと相なりました。
今後願わくば貴重な潮流から外れて漂流などすることなくしっ
かり帆を張り末長く航海を続けて参りたい所存です。
どうか今後も樹下美術館のことを宜しくお願い申し上げます。
平成29年6月25日 樹下美術館館長

弦楽カルテット演奏曲目
・モーツアルト:ディヴェルティメントK136より
・ドヴォルザーク:アメリカより
・モーツアルト:アイネクライネナハトムジーク
・ピアソラ:リベルタンゴ
・小山作之助 後藤丹編曲:夏は来ぬ

一首 俵万智さんから少しお借りしました。
〝一人でもここがいいねと言う人が訪ねたその日は樹下の記念日〟

 

初夏の昼のレコード A・ルービンシュタイン、F・クライスラー、エディット・ピアフ。 

2017年6月1日(木曜日)

昨日と打って変わって気温が下がり過ごしやすかった日。

昼休みにSPレコードを持参された方と蓄音機を回し、お客様を交え
て聴いた。

A・ルービンシュタインのピアノでショパンのノクターンから一曲、F・ク
ライスラーのヴァイオリンでヘンデルを、エディット・ピアフのシャンソ
ンは谷間に三つの鐘が鳴るだった。

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機能は単純だが加工の無いヴァイオリンやピアノの音が時代を超え
て館内に響きわたる。。
当時の演奏家たちの丁寧な音は6月第1日の庭の眺めとともに安心
で心地良かった。

 


谷間に三つの鐘が鳴るは自分の中学校時代にはほかのグループ
が盛んに歌い、ラジオからしばしば聞こえた。
一人の子供の誕生と結婚、そして晩年の死を告げる谷間の鐘が歌
われている。三つの鐘は人生で鳴らされる三回の鐘の事になる。

戦後間もなく発表され、日本におけるリンゴの歌と同様に大戦で疲
弊したフランス国民に安息と勇気を与えたという。

エディット・ピアフ (1915年 – 1963年)。フランスで最も愛されている
歌手の一人。貧しい生い立ちと比較的短命で波乱の人生だったが、
国民的象徴にまでなった人。

本日聴いた盤の状態はいずれも大変良く、およそ70年前の人々に
同化してゆくようなひと時だった。

庭仕事は楽しい チェット・ベーカーの曲はお掃除に合う歌だった。

2017年5月26日(金曜日)

昼休み美術館に行くとお客様が途切れていて二人のスタッフ
が芝生で雑草取りをしていた。

昨日の私のノートを見て、雑草取りに精出してたようだった。
時々庭仕事のことを掲載すると、それを読んだスタッフが続
きを行ってくれたり、範囲を広げてくれて助かるこことがある。

庭造りは一人でおこなうと没頭できて、それはそれ良いので
あるが、同じ思いの人が加わると元気と能率の次元が全く上
がって楽しくなる。。

そもそも庭の管理は美術館の展示以上に手が掛かる。一人
で行うのと二人では効果が全く違う。

中々思い通りにできないことだが、倒れそうな花に予め支柱
でささえ、終わった花は早めにつみ取りお礼肥を施す。他を
を被うほど旺盛なものは処理して日射しを作ってやり、栄養を
奪う雑草は徹底して取る。
樹木の足許の雑草やひこばえは取り去り、足許や幹をきれ
いに見せるようにする。
夏に向かって芝の撒水のほか、半日の日射でくっだりする花
も出て来るので気が抜けない。

張り合いある庭仕事は大好きであり、出来れば朝から晩まで、
夜も電気を点けてでもやりたいくらい自分の性に合っている。

20年以上も前、夜の庭でスコップを持ってうろうろしていたら
通報され、パトカーが来て職務質問をされたことが二回あっ
た。

さて以下のチェット・ベーカーの曲はが学生時代によく聞いた。
テンポの良い軽めのジャズで、当時聴いた人が「これはお掃
除の時のハタキ掛けで聞くとはかどりそうですね]、と言ったこ
とがあった。


That Old Feeling
〝昨日貴方をひさしぶりに見て目と目が合い、突然なつかし
さがこみ上げ、心臓がとまりそうになった。
昔のあこがれの灯火が消えていないのだから、新たな恋など
生まれる訳はやはり無いんだ〟と歌っているようです。

歌が庭仕事に合うかどうか、わかりませんが、10年ほど前、あ
る若いお医者さんご夫婦の新居にお呼ばれした時、、奥さんが
これいいでしょ、と言って突然チェット・べーカーを掛けた時、少
々びっくりした。

アニマの森は女性の不思議な時空、山本信さんの作品。

2017年5月17日(水曜日)

樹下美術館のカフェに若い女性の彫像置かれていて、
いつも庭を背にうっとりした表情をたたえています。

私どもの縁者、彫刻家山本信さんの作品です。

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透明感あふれる少女の像。

今春山本さんが来館され、今度は大人の女性の像を
お持ち下さいました。

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親しさが伝わる成熟した女性のフォルム。

氏は来る5月23日から28日まで川口市において個展
で「アニマの森」を発表されます。

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アニマは男性が普遍的に有している女性的な潜在意識。
モダンな衣装だが中世風な赴きを湛えた女性たちが真っ
直ぐな芯に巻き付けられて立っている。

あまつさえ頭上から枝や葉が伸びていて我々とは異な
る樹木あるいは生物上の時間を生きている。
林立する多数の樹の女性たちはその場所に森の静けさ
と深みを与えている。

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多くの受賞歴と発表歴を重ねられるユニークな山本信さんの
作品をご覧になって下さい。

樹下美術館の小さな橋。

2017年4月25日(火曜日)

樹下美術館の南側(裏手)に小さな流れがあり、そ
こに小さな橋が架かっている。

10年前の開館の時に設えてもらったが、昨年新しく
架け替えた。

そばにデッキとベンチがあるので時々お客様が橋を
渡って農道を歩かれる。

あまり旅行をしないので、この小さな流れと橋にふ
と旅情を感じることがある。

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耳を澄ますと水音が聞こえる。

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橋の向こうは頸城平野。間もなく田に水が張られる。

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渡った方向から見たベンチとテーブル。


ミルスブラザーズによる「小さな竹の橋の下」。
〝長い年も月も色とりどり、、、〟この歌には日本語の
歌詞があり学生時代の思い出がある。

強風の日 チューリップの深植え 「ディア・ハート」。

2017年4月18日(火曜日)

日中強風に見舞われた日、昼の水田の東方に大きな白い雲。
滑らかで弧を描いた均一な形状は大きなレンズ雲であろう。
風の日の雲は変化があって興味深い。

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チューリップが風に煽られて揺れる。

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こちらの花はあまり揺れないのは背が低いからか。
背が低いのはチューリップらしくないが、何人かのお客様から可
愛いですね、という感想が聞かれた。
球根を深く植えると背が低くなるとも聞いたが、可愛くしかも風に
強いのであれば深植えも悪くないと思う。

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美術館周囲の山桜が和やかに咲き始めた。

昨日に続いて懐かしい青春時代の歌声「ディア・ハート」

1960年代ヘンリー・マンシーニによって作曲された映画の主題歌。
青春時代の歌が思い出されるのは春のせいかもしれない。

明日また荒天が予報されている。
咲き始めた山桜は耐えることが出来るだろうか。

桜が散って時間が色づく  遠い日の「My Way」。

2017年4月17日(月曜日)

ぽつりぽつりと人が訪れる隠れた桜の名所、上越市犀潟は新堀川の堤。
吹き出すような花の風情を見るにはここは良い場所だと思う。
時折新堀川の帰りという人が樹下美術館に寄られる。

高田よりも数日遅く推移する花が本日散り始めていた。

 

新堀川1704
一昨日の花。

 

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打たれるように落花の下を通ると心洗われる。

光景にふと「My Way」の歌がよぎった。


50年近くも遠い日、ある人から聞いて知った「My Way」。

その人は、男の人にはこんな歌があって羨ましい、と言ったような気がする。

その頃ずっとずっと先だと思っていた歌われている年令を今自分が生きてい
る。
だが自分の人生は歌のように高らかに歌い上げられるようなものではない。

そして今日の花びら。
彼や彼女が散るたびに時間がきれいに色づくのが羨ましいとも思った。

モーツアルトの短調を聴いていたようなクリスマスローズ。

2017年4月16日(日曜日)

昨日の空は曇りから夕刻には晴れ間へと変わった。
遅い時間、お客様が持参したアルトゥール・シュナーベル
のSP盤でモーツアルトのピアノソナタ第8番イ短調K310
番を聴いた。
ちょうどモーツアルト大好きのお客様もいらして一緒に聴い
た。

聴き終えて外へ出ると、開館以来庭で一番乗りを果たした
クリスマスローズが、自分たちの春を惜しむようにうつむい
てモーツアルトの短調を聴いていた風だった。

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本日はよく晴れて同業のゴルフがあり、準優勝をさせて
頂いた。

開花を待つハクモクレンやソメイヨシノ キジバトの吸水 大口満さんの作品展 儀明川のコヒガンザクラ。

2017年4月2日(日曜日)

日中よく晴れて頬に冷たい風が気持ち良かった日曜日。

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樹下美術館の直近、犀潟は新堀川のハクモクレン。開花をまち
きれずそわそわしている風だった。

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当館のソメイヨシノのもすっかり開花の準備が出来ている。

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カフェで今年からメニューに加わったピザトーストを食べた。
食べながら水盤に飛来したキジバトを見た。
つがいで行動することが多いキジバトだがこの鳥は独身の
ようだ。

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一般に小鳥は水を飲む場合口にした水を上を向いて飲み込む。
しかしハトは水にくちばしをつけて下向きのまま直接飲める(吸
い込める)らしい。

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午後、上越市は高田本町の大島画廊へ行った。
裏手を流れる儀明川の一角でコヒガンザクラが良い具合に
開花していた。
澄んだ雪解け水に青空が写り、ひとしお花を引き立ててい
る。

画廊で買い物をして大口満先生の作品展を観た。
乗鞍岳の山岳、花、果物、京都、紅葉、人物など多彩なモ
チーフに合わせ油彩水彩が自由に使い分けられている。
身近で繊細なものから自然や時間のダイナミズムまで楽し
めた。
正面の大作は雪の大潟区海岸に取り残された漁師小屋が
描かれていた。
私が頻繁に行く四ツ屋浜を西に下ったところにある数軒の
廃屋。
これが降る雪の中で崩れるように重なり合って描かれてい
る。
廃屋に降った雪は、かって賑わっていた浜への鎮魂のよう
に心に響いた。

会場でお元気な舟見検二先生と堀川紀夫先生にお目に掛
かって嬉しかった。

用事のあと美術館に戻り、柏崎市から来られた三人のお
客様と話をした。以前から当館を気に入って下さっている方
々で、今年もお会い出来て嬉しい。

本日も切れ目なくご来館頂き、有り難うございました。
やや寒かったが春の歩調がしっくり感じられた日でした。

上越文化会館で辻井伸行さんのピアノを聴けた幸運。

2017年3月23日(木曜日)

寒かった日、夜は雪がふってもおかしくないほど
冷えた。

そんな夕刻から普段名を聞くばかりだった辻井伸
行さんのピアノコンサートに行った。
12月14日からはじまった全国20カ所を回る日本ツ
アーの18番目が本日の上越文化会館。

売り切れ必至という幸運なチケットは昨年クリスマス
に知人からもたらされていた。

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駐車の車が上越文化会館を何重にも取り囲み、
満席などまず珍しいホールは立錐の余地もなほ
どの入りだった。

演奏の前半は辻井氏初のバッハとなる「イタリア
協奏曲」とモーツアルトの「ピアノソナタ第17番」。
後半はベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」と同
じく「情熱」、何ともスケールの大きなプログラムだ。

美しい抑制と若さ溢れるダイナミズム、ロマンティッ
クな短調と歯切れ良く弾む長調の素晴らしい抑揚。
TVで見慣れた通り、曲が終わるたびさっと立ち上
がって礼をされる辻井氏。
ブラボーが叫ばれ、一曲ごとに嵐のような拍手が
会場を包んだ。

弾き終えて鳴り止まぬ拍手に、3曲ものアンコール。
「別れの曲」が始まると目頭を押さえる女性が見られ、
穏やかなオリジナル「風の家」のプレゼントがあり、
フィナーレで「ラ・カンパネラ」が始まるや会場に一
瞬歓喜のどよめきが起こった。
アンコールの途中で、マイクを通して上越で演奏が
出来て嬉しいと述べられた。

辻井さんを聴くことは奇跡に出会うことでもある。
生きていれば上越でもこんな幸運に巡り会える。
これからもできるだけ体を大切にして暮らしたいと、
しみじみ思った。
10月には新潟市でロンドン・フィルとチャイコフスキ
ーのコンチェルト1番を演奏される。熱狂が目に浮
かび、願わくば聴いてみたい。

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