樹下だより

二つの特別展が終わった 晩秋の庭へ。

2022年10月26日(水曜日)

昨日で樹下美術館15周年の記念特別企画「齋藤三郎ゆかりの人々」展および「ゆかり上越 主体美協会のひとびと」展が無事終わった。
リピートされるなど好評の感触を得て、前者は4ヶ月、後者は2ヶ月半の会期延長をさせて頂いた。大規模館に比べるべくもないが、期間中の有料入館者数は849名、カフェを入れた入館者2489名となり前年同期より大幅な伸びだった。

当館初めての記念事業の成果は十分ではなかったかと振り返りご来館者様に心より感謝申し上げます。

閉会に当たり「齋藤三郎ゆかりの人々」で貴重な収蔵品の出品にご協力いただいた二代陶齋・齋藤尚明様はじめご好意の皆様、および「ふるさと上越主体美術協会のひとびと」で傑作を出品くださった作家さんと関係各位に深く御礼申し上げます。
最後に両展について何かとご指導頂いた小林古径記念美術館の宮崎俊英館長に厚く御礼申し上げます。

休館日の本日、展示を片付けももとの展示に戻した。
倉石隆「新旧コレクション展」、齋藤三郎「湯呑と盃」です。

作業をされたスタッフの皆さま、期間中および本日の一日、本当にお疲れ様でした。明日からまた頑張りましょう。

以下は今日の庭です。

一時心配したホトトギスが咲き秋の庭らしくなり、気が早いマユミが紅葉し始めました。

長野から再びお客様 入院の種々(くさぐさ)。

2022年10月22日(土曜日)

【長野県からのお客様】
去る18日、長野市から団体で来館された男性が、今度は奥様連れで本日再び来られたと聞いた。樹下美術館が気に入ったからということ、何と有り難いことかと喜びました。

本日お客様の話で、先日の皆さまの熱心な鑑賞態度はどこへ行っても同じと、伺った妻の言葉。さすが勉強熱心な長野県人だと感心しました。どうか季節が変わりましたなら又お寄りください、お待ちしています。

【二泊三日入院のわけ】
さて前年発症した心筋梗塞による入院は夜間の救急搬送だった。当直医の応急処置と診断後、冠動脈拡張術のため循環器内科医師とスタッフが招集され、深夜に掛けておよそ3時間カテーテルによる造影検査と処置が行われた。
慌ただしく動く皆さんに囲まれながら、当の私は不整と微弱で必死の心臓をよそに終始ぼんやりしたまま身を投げだしていた。

そして今回1年2ヶ月通院の後、10月19日午前、予約通り受付と循環器内科外来で手続きし、9時半に病室に入った。付き添った妻が帰ると直ぐに病衣に着替え点滴が始まった。

この度は検査前後の一日半、生理的食塩水(生食)を主とした持続点滴を受ける。私のように元来腎臓に一定の問題がある人間が負担が大きい造影検査をするには、臓器への負担が無い生食を投与し続けて造影剤による負荷を薄め軽減を図らなければならない。
外来で、あるいはせいぜい一泊入院で済む検査を二泊三日かけて行うのは、腎保護を考えてのことだった。

 

とても若い看護師が射した点滴部位。
これだけで前後6本の持続点滴が受けられた。

 

三本目から連結になった点滴。

【岡倉天心の本】

持参した「茶の本」(The Book of Tea)。
岡倉天心著 立木智子訳 平成6年淡交社発行。
明治39年英文による著作は欧米で販売され反響を呼び、
以来多くの訳本も出版されている。

原著を読んだことも見たことも無いが、この本から明治時代にあって、岡倉天心の英語力と深く膨大な教養に驚かされる。アメリカ留学歴がある天心の欧米人への訴え方は洗練されていて、いま我が国で日本文化と固有の美をこれほど上手く伝えられる人がいるだろうか、と考えさせられた。

訳者の言及にあったが、明治の文化人たちの教養は凄まじいものがある。このことは時々お会いする二代陶齋・齋藤尚明氏もよく指摘される。

このたび、これまで途中で投げ出していた本を点滴しながら二回読むことができた。
昭和62年から下手の横好きのまま続く私の茶。何らかの形でずっと続けていたいと痛切に思い、そのためにも我が心臓と腎臓にはもう少しのあいだ頑張ってもらいたいと心の底から願った。さらに天心の晩年の山荘であり終焉の地でもある妙高市赤倉に建立されている岡倉天心六角堂へ、是非とも行かなければならないとも。

本日は時間がきましたのでここで終了させてください。
後日この続き【働く病院スタッフ】【点滴をしたまま衣服を着替える】、【寝不足の原因】、【検査と結果】などを書いてみるつもりです。

長野県からバスが来た。

2022年10月18日(火曜日)

本日午後、長野市芹田公民館の絵画サークル15名様がバスで来館された。

コロナ以来久し振り(何年振り)のバス。

小林古径記念美術館の後当館を訪問された。

展示室の皆さま。
とても熱心に観て頂き感謝しています。

 カフェで一息。

カフェでは蓄音機を聴きたいと仰り、小畑実唄「高原の駅よさようなら」と雪村いづみ唄「ブルー・カナリー」をお掛けした。とても珍しがられ、喜んでいただいた。

私のあこがれ長野県からのご来館。皆さま本当に有り難うございました。
別所温泉に行ってみたいと思っています。

秋空のフェリーチェ。

2022年10月11日(火曜日)

風はあったが空青く晴れた午後、美術館にお洒落な自転車が二台あった。
裏のベンチで自転車のお客様が休まれています、とスタッフの言葉。どんな方だろうと、お会いしに行ってみた。

 

 

鉄テーブルでお茶をされていたのはトラットリア ラ・ペントラッチャ上越ほか新潟市、東京都、川崎市でクオルス・トラットリアとしてイタリアンを展開されている高波氏とお友達の設計家。

ヨーロッパの庭みたいですと仰るお二人。
普段とがらり変わってサイクルジャージ。
お忙しい方がこうして寄って下さるのは嬉しい。

傍らのトクサに赤トンボが羽根を休めている。
スタッフと妻は来年に向けハーブやレモンの木を植えていた。

近隣の青空と雲。

 


ドメニコ・モドゥーニョ「ボラ―レ」。
真っ青な空を飛ぶ思いを歌っている。

学生時代のラジオからいつも流れていた「ボラ―レ(ヴォラーレ)」。秋空の下自転車で来館されたお二人の様子はイタリア語でフェリーチェ(幸福)というのですね。

日鉄工材の皆さまの訪問 植えて4年、初めて実った柿を食べた。

2022年10月1日(土曜日)

よく晴れて過ごしやすかった土曜日。午前の外来中に4日間高熱が続く方、徐脈と前身浮腫の方の往診があり緊張を禁じ得なかった。お一人は緊急入院となり一応安堵した。

本日午後上越市の日鉄工材の方達5人が美術館を訪問して下さった。地域のさまざまな施設を定期的に訪問、学習されているということ。文化団体やサークルの訪問は時々あるが、先端の工業生産会社の方達が訪ねてこられるのは珍しく、同社の文化面に対する取り組みにとても感心した。皆さま本当に有り難うございました。

夕刻庭の柿の木を見ると実が一段と黄色味を増している。ものは試し、一個もいで剥いてたもらったところ甘い!
これなら大丈夫、もう一つもぎ、居あわせたお客さんやスタッフとサクサクポリポリ、美味しく頂いた。驚いたことにスタッフの一人は甘柿を初めて食べたと言い、とても美味しいと言った。

玄関脇のベンチで秋風に吹かれながら食べた。

後口まで甘さが残って美味しく、皆さんの顔に幸せが浮かんだ。
まだ13個ある。これからゴマがいっそう黒くなり甘みも増すことだろう。4才くらいの苗木を植えて4年、初めて実った。美術館で秋の味覚を獲り、味わうとはなんと幸せなことだろう。

来週木曜日午後一時半ころにまた獲る予定ですので、居あわせた皆さまと一緒に食べてみたいと思っています。

ふと耳にしたラジオの「楽曲」と「曲」の違い。

2022年9月24日(土曜日)

本日はまた別の台風がシトシトと雨を降らせた。

話は変わりつまらない事かも知れないが、比較的若者向けの放送などで、かって私達が「曲」と言っていた和製のポップスなどをしばしば「楽曲」と呼称することに大げさだな、と違和感を覚えていた。

一昨日午後、美術館から仕事場へ戻る車中の若向けのラジオでおや?と思うことがあった。ディスクジョッキーが「楽曲」と「曲」を使い分けたのだ。

言うまでも無く楽曲の語感は固く、クラシック音楽の用語のようでもあり、短縮や省略の傾向を好む若者言葉からしてもわざわざ曲を楽曲とは何故?その昔シンガーソングライターの登場あたりから出て来たようでもあり、謎の一つだった。時には楽曲、楽曲の連呼がある放送などは耳ざわりで、スイッチを切ることもあった。

さて数日前の放送です。
30代の人か、若者向けの音楽を熱く語っている。楽曲、楽曲と30秒に10回も言ったのでは。切ろうとした時、次の「曲」は○○です、と突然言葉を変えた。そして“上京する前夜友人とカラオケに行き、この「曲」を二人で歌った。歌いながら途中から涙が止まらなくなり、その時の自分の気持とビッタリな「曲」だった“と話したのだ。

なるほど、彼は二つの言葉を使い分けている?どこが違うのか後にネットで調べてみた。すると“曲は歌詞で楽曲はメロディーが合わさったもの”というものから、“クラシックの曲”、あるいは“どちらも同じ”という記載まであり、すっきりしなかった。

しかしラジオのおしゃべりからすると、少なくとも自分あるいは自分たちが実際に歌う時の歌は「曲」。解説や総論では「楽曲」というのかな、と推量した。但しネットには“偉そうに言う時は楽曲”という皮肉めいた小さな記事があり、少しつかえが取れた。

 


宮城県の長持唄。
いま宮城県の親族が来ていて、新婚さんもいる。

14号台風が散らした落ち葉。

2022年9月20日(火曜日)

九州、四国に被害をもたらした台風14号。昨夜半から当地でも風の音が強まり直撃を心配しながら床に着いた。歴史的とも言われた台風だったが、当地ではさほどの被害もなく、温帯低気圧となり東北地方の太平洋へと抜けていったと聞いた。

以下台風一過の美術館の庭。

 まだ青いままの落ち葉も多い。
意図したように広く満遍なく散らばっている。

ひどい風であれば庭の端か隅に落ち葉を集めるか、一斉にどこかへ吹き払ってしまう。それがなぜこうも上手く均等に散ったのだろう。

今回も一度は払うよう吹いたが、弱まる頃は置くように吹き終えたのか。以前紅葉のモミジがこの様に散って感心したことを思いだした。雨で濡れた地面や草が落ち葉を抑えていたというのもあったことだろう。

明日お天気ならばスタッフは落ち葉掃きに大変なはず。どうか宜しくお願いします。

My condolences(弔意)。

2022年9月19日(月曜日)

ドイツびいきだった父は朝鮮戦争のころから米国の写真雑誌LIFE(ライフ)を数年間購読した。ひなびた農村の道を左右2列で進軍する米軍のモノクロ写真を何度も見た。

ある日華々しくも豪華な式典の写真が載った。エリザベスⅡ女王の戴冠式だった。特に目を奪われたのはカラー写真の王冠で、小さな脳みそが溶けそうなほどきれいだと思った。

あれから70年、国葬で柩の上に置かれた王冠(NHKの画面より)。下段の輪の中央にある317カラットの巨大なダイアモンドはかって南アフリカ共和国政府から贈られたもの。発見当初採掘現場でダイアと分からず、水晶として一旦捨てられたことがあったという。

 

1946年自室の王女(上)、2008年国会へ向かう女王(下)
写真はいずれもgettyimages提供

今夕女王の国葬中継があった。画面から英国の国力と随所に現れる(恐らく真っ当な)キリスト教の教義と儀式を興味深く視聴した。
戦後何度か浮沈を繰り返した英国。今ウクライナへ並々ならぬ支援を継続しているにも拘らず、完璧な葬儀と国民が現す弔意はさすが英国というほかなかった。

中継から三つの事が興味深かった。
○NHK地上波にはさまざまな説明キャプションのほか台風情報まで貼られてゴチャゴチャとして見ずらい。一方BSはこれらが少ないのですっきりして観やすかった。

○弔辞、返礼などは一切無く、大統領が一言聖書の一節を述べただけだった。ずっと聖歌が続き葬送の意義は明瞭で非常に洗練されていた。

○遺影が無い。
僭越至極だが、小生もずっと前から自分の葬式に遺影は飾らないで、とお願いしている。冷たくなって柩に横たわっている本当の自分を感じてもらえば十分だからだ。ただし女王の柩のように自宅の花を、バラで無くとも良いが少量添えてもらえるなら有り難い。

お客様に恵まれる 伝統の萩 ブットレアにヒョウモンチョウ 何度も聴く「枯葉」。

2022年9月18日(日曜日)

本日日中の車は37℃を指していた。台風の影響で一定の風が吹き、暑くはあるが気分が悪くなるようなものでは無かった。

12時頃の駐車場。
新潟日報の記事のお陰もあり夕刻までお客様は途切れなかったと聞いた。
一日二度来館されたお二人様有り難うございました。

美術館の紅白の萩。
秋の伝統の花が暑さの中、笑みを浮かべていた。

仕事場のブットレアはヒョウモンチョウを誘っていた。

 


若い頃は、また「枯葉」かあ、と言っていたが、
何度聴いても飽きなくなった。
紅葉になったらまだ別の「枯葉」を出してみたい。

若い人達にルンバと言っても何?と言うに違いない。

嬉しい新潟日報の記事。

2022年9月16日(金曜日)

過日新潟日報の取材を受けていた。開館15周年記念企画「齋藤三郎ゆかりの人々展」および倉石隆にちなんだ「ふるさと上越主体美術協会の人々展」についての取材だった。
上越支社の記者Wさんは地域や芸術について広い見識を有され、要点をしぼりながらの取材はお話していて楽しかった。本日その記事が朝刊に掲載された。

取材時間はかなり長かったのでどんな記事になるか心配だったが、想像以上のボリュームにもかかわらず読みやすく、ほっとして感激した。

「上越の芸術文化にふれ」のタイトル、樹下美術館15周年・記念企画展のサブタイトルが付いていた。タイトルに格調があり、二つの企画展それぞれの概要が樹下美術館の紹介とともにとても上手くまとめられていた。

申し分けありません、右下の汚れは朝食のイチジクです。
よろしければ全体を大きくしてご覧下さい。

構想2年。2007年、65才で突然のように開館。精一杯の個人美術館の15年は無謀、冒険の指摘も耳に入らないほどただ夢中に、そしてしばしば楽しく過ぎた。心身に良いものは美しくまた美味しく楽しいはず。それの豊かさを文化と呼んで頂けるなら幸せなことだ、と光栄も感じた。

このたびの記事を読み、私の願い以上のものが自然な文体で書かれ、記者さんの力量に深く感銘を覚え、掲載に感謝を禁じ得ない。
世界と世相は決して明るくない。この度の記事がともした一灯の有り難みは身にしみる。歳は重ねたがこの機会に精一杯歩みを進めたい。

本日、さっそく県内遠方から何組も来館者さんがあった。

二つの企画展の期限は今月20日までだったが、貴重な紹介記事を生かして以下のように延長致します。

「齋藤三郎ゆかりの人々展」「ふるさとゆかり主体美術協会の人々展」
につきまして会期を10月25日(火曜日)までに致します。

ホームページのお知らせは週明け20日に直る予定です。

残りの期間までどうか宜しくお願い申し上げます。

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