篠崎正喜さんの「海辺の街」。

2023年8月25日(金曜日)

10月17日まで好評開催中の篠崎正喜展。氏の作品には独特な鮮やかさ、こまやかさ、そしてある種旅情と平和な時間が描かれる。
本日は作品「海辺の街」からそれらについて私なりに観てみたいと思う。

「海辺の街」33,5×47㎝

南欧あるいはイスラムまた中近東?など、とりとめ無い雰囲気の街が一塊(ひとかたまり)になって描かれている。二つの島があり一艘の船が浮かぶ濃い色の海の水平線を、真っ白な雲が囲み大気は澄んでいる。そこは形を変えた作者のふる里かもしれない。

手前の大通りを見ると色々な人が様々に描かれ、ゆっくりした時間が流れている。以下作品の細部にカメラを向け拡大し、一瞥しただけでは見逃しそうな作者のこだわりと描かれた生活の一端に目を遣ってみた。

最も左でトラックの荷の積み降ろし。

建物の通用口と思われる場所のトラック。明るい緑色のトラックと黄色の幌が軽やか。手前のカップルの長い影が人の息づかいを浮かび上がらせている。

トラックの荷はこのバザールのためのものらしい。しっかり付けられた影が人物たちに存在と生命を与えている。

中央~左部分。

手前にレトロで良い色の車が二台走っている。建物の入り口の右に犬が、左に女性が果物?を売っている。さらにその左にヤギのような犬を連れた男性が角をまがろうとしている。

中央から右部分

お洒落な半円の前壁の建物の左にウィンドウがあり、張り出されたポスターを男が立って見ている。建物は映画館であろう、小さな窓は切符を売る窓口か。建物入り口にもぎりの女性がいる。路上の自転車は子供のようだ。小さな町の心意気ある映画館に作者の思い出があふれている。

作品右下の屋上で猫が
こちらを見ている。

一種広場のような通りは車椅子を押す人影が見え、思い思いに人々が行き交う。影の長さから午後の遅い時間であろう。

 

混雑した建物の屋上のあちらこちらにガラスの半球があしらわれている。美しいガラス球(玉)は作者お得意のモチーフで、様々な場所で不意に登場する。街並にはお城のような建物も見える。

中央の和風(中国風?)の建物は
お寺か。

描かれるガラスは並々ならぬ研究の賜物ではないだろうか。色彩や厚みの違いも美しく描き分けられる。

以上ざっと見てきたがまだ何かが隠されているような気もする。そう思わせるのが街というもの、あるいはその営みではないだろうか。
小さな映画館やお寺のあるゆっくり時間が過ぎる澄んだ大気の街。行ってみたくなるような平和な「海辺の街」を紹介してみました。

この先他の作品の細部もまた観てみたいと思います。細部は篠崎作品の特徴で観る楽しみの一つです。

写真2枚目と3枚目は前日の積み残しで翌日追加致しました。

10月12日15時から篠崎正喜さんの「生成AIと美術」のギャラリートークを致します。35席ほどの予定です。

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