母さん 海へ行って来ましたよ

2011年8月22日(月曜日)

母さん、昨日は海へ行ってきましたよ、急に寒くなって海は静かでした

貴方に海と山とどちらがすきなのと訊くと、たいてい山と答えましたね

 

越後の海は深くて荒れるからと言ってめったに海へは行きませんでした

ふるさとの豊かな有明海に比べるよしもありませんので、仕方ありません

 

それにしても生地に似ているという板倉の絵は本当によく描かれていました

母さんが板倉で「山のあなた」をそらんじたときは少々驚きました

その時に言いましたね、小さい時に失った父親にずっと会ってみたかったと

いつか天国へ行ったら真っ先にお父さん、と大声で呼んでみたいと

ところで母さんは挨拶が下手だし何かと無頓着だからとても苦労しましたね

小姑さんに叱られながら縫った経帷子を着て、うまく三途の川を渡れたのですか

 

もう年だし、両足の骨も折っているのですから心配で

できればすぐにでも行って背負いたい気持ちでした

 

ああしかし、幻のようなことはもう考えないことにしましょう

十分に生きてしっかりお骨になったのですから

 

御父の話を聞いて以来母さんが余計身近になっていましたよ、正直

よければ長く私の心の中に居て下さい、それが何より有り難いのです。

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