柚子、陶齋の歳寒三友。

2019年12月14日(土曜日)

荒れたり晴れたりをめまぐるしく繰り返す日。暦は12月も半ばにかかり一気に慌ただしくなりました。
そんな日頃に近隣の庭先で黄色や橙(だいだい)の柑橘類の実を見ると心温まります。

過日は柚子を沢山頂き、スタッフと分け合いました。これから茶碗蒸しや熱いお蕎麦にお雑煮などがとても楽しみです。

ところで樹下美術館展示の作家齋藤三郎は柚子を描いていて、美術館にも何点かあります。

 

 

百合や椿などを描いた染め付けの絵変わり皿セット。向かって左下に柚子皿。
和食器は一般的に5客1セットですが、陶齋は6客で設えました。
1客欠けても揃うようにという配慮だと聞いたことがあります。

 

染め付けの青がとても爽やか。

 

こちらは色絵の一枚。師の富本憲吉から受け継いだデザイン。
磁器の白さ、カゴの赤と黄色の実の対比が美しい。

 

この柚子皿は上越市髙田における初期の作品の一つ。
もりもりとしたボリュームが柚子らしい。

上掲の柚子皿には「歳寒酸友」と讃が記されています。この言葉は中国宋代の「歳寒三友」を陶齋らしいユーモアでもじったものです。
歳寒三友とは、古来中国で尊ばれた三つの画題「松」「竹」「梅」のこと。
歳寒は寒さ厳しい時節を指し、そのような折に緑の生命を維持する松、しなやかな竹、香り高い梅の三つが画題として尊ばれていたといいます。またそれらは、高雅風流を愛する文人が冬に友とすべきもの、として親しまれたということです。

当絵皿は、齋藤三郎が髙田に来て未だ日が浅い昭和20年代の作品です。当時の髙田で彫刻家の戸張幸夫及び写真家の濱谷浩と陶齋の三人は「三貧(さんぴん)倶楽部」と称して集まり、安いお酒を酌み交わしては四方山を話したといいます。
皿に書かれた醋友は、酸っぱい友「柚子」であり、一方で貧しかった三人の仲間のことではなかったか、と想像しているところです。
万葉集もそうですが、中国の古事への造詣など、陶齋世代の教養がしのばれまた感心させられます。

話変わって美術館裏の田に生える二番穂を食べる試みは進み、昨日新しい野球ボールがネットで手には入りましたので試してみました。このことも追ってご報告しなければと考えています。

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