昨日小生のギャラリートーク。

2023年9月10日(日曜日)

上越市の小林古径記念美術館で7月15日~10月9日の期間で好評開催中の「生誕110年 齋藤三郎展」。昨日午後恥ずかしながら「齋藤三郎の文様と署名」の題で話をさせてもらった。

用意した資料の文様集は収蔵作品の草木や果実の写真34種92枚の小さな写真および大雑把な時代ごとに見られる器の署名20個を載せたもの計3枚。それに戦前の若き日の奇抜ともとれる署名と戦後髙田時代の見慣れた署名の隔たりと繋がりを示す資料を一枚加えた。
文様(模様)の話題は三郎のモチーフへの関心と優れた観察とデザイン力を作品写真とともに見ていった。

一方署名は作品鑑賞に大切な要素で、真贋は勿論、好きな作家ほど作品内容と共に制作年代を知りたくなる。当然のように三郎の署名も時代とともに変化が見られ、私なりの解釈を述べてみた。
当然ながら文様よりも遙かに難しい話題であり理解可能な実証も必要だった。

まず当館に青磁と白磁2つの鉢があり、それぞれに牡丹と椿が陰刻されている。両者の器の署名は珍しく楷書に近い書体で丸い縁取りもまた陰刻されていた。色絵の多い作品とはやや異なる様式と署名は魅力的だが肝心の制作年代が分からずじまいだった。

かくしてしばらくの間、樹下美術館の齋藤作品には、以下二つの謎が存在していたことになった。
①齋藤三郎の戦前(昭和12年~15年)と戦後(昭和23年初窯以後)で署名に大きな異なりがある。両者の隔たりはどう繋がるだろうか?
②これとは別に、丸や楕円の枠に囲まれ陰刻された楷書風の署名はどの時代のものなのか?

小なりと言えども美術館と名乗る以上収蔵品の制作年代や署名について大きな不明があるようでは話にならない。

しかし双方の謎は、あるお茶人から拝領した香合と新潟県立近代美術館が収蔵する「呉須搔落牡丹文瓶」の署名によって私なりに一応の決着を見るに到った。

以上の主旨で1時間余の話、本日は遅くなりました。続きは後日にさせて下さい。

ところで講演(トーク)は午後2時開始で、3,40分前に会場に着いた。場内に20脚ほど椅子が用意されていてこれで十分と想像し、時間があるので齋藤三郎展をひとまわりした。
戻って仕度を始めると人が増えはじめ、スタッフが次々に椅子を足した。それが足して足しても増え、最後には館内の椅子を総動員するまでになり、私自身とても驚いた。

立っている人も何人かいて、この会場始まって以来の参加者だったという。

2023年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

▲ このページのTOPへ