医療・保健・福祉・新型コロナウイルス

グループホーム

2009年5月8日(金曜日)

  近くにグループホームがあって、月に一度伺っている。グループホームでは一定の認知症のあるお年寄りの方々が職員さんたちに見守られながら協同的に生活をしている。部屋は個室。介護保険の時代になって伸び、それぞれ地域で大切な場として定着している。

 

 館内は穏やかで、時々皆さんとスタッフさんの歌声が聞こえたりする。今日の訪問では目の前の林に白い藤が沢山咲いていた。
長いつきあいとなったAさんの部屋で小さな箱を見せてもらった。彼女の大好きな可愛い可愛い品が入っていた。ここでは多くの方が、それぞれに大好きな品を持っている。

 

 皆さんが比較的安定していて長くいらっしゃるのが嬉しい。

 

 

押し車の荷台に小さな箱。緑色の蓋が付いている。

 

ゴッホのアーモンドの花の絵に似た白藤。

 

 

フェーズ5のゴールデンウイーク

2009年5月2日(土曜日)

 ゴールデンウイークがピークに入った。子ども、孫達、縁者が次々にやってくる。今日は5人、明日は2人、明後日は6人。ほかに親たちの世話もあるから大変だ。それでもアテにされれば頑張ってしまう。本当に大変なのは妻。大丈夫だろうか。

 

 段々と家の泊まりを少なくして、近くの温泉宿などに分散してもらうようになった。親を長くみて子もそこそこ見る世代など、私たちの前後が初めてで最後かもしれない。

 

 夕刻、庭でクレマチスの棚を作った。昨年のもいれると5つになった。庭は本当に落ち着く。実は家のそばにいるのが何かと安心で、ある種職業柄の中毒症状?
庭から田んぼの向こう300メートルほどに高速道路が見える。上下線とも切れ目無く車が続く。猛スピードのパトカーが忙しそうだった。

 

 4月28日、フェーズ4移行をを書いたばかりが、瞬く間に5となった。新型インフルエンザの危機につま先を浸しながらの民族大移動。フェーズ5でここまで許容なのか、本当のところ不安がある。
検疫は頑張っているが一方で医療体制に穴が見える。やや小康の今、不足克服を願っている。休暇中だが行政や医師会は会議だろう。

昨年から集め始めたシーグラス。

疲れを慰めてくれる。

マーガレット・チャン

2009年4月30日(木曜日)

 WHO(本部ジュネーブ)のマーガレット・チャン事務局長は29日、新型インフルエンザの警戒水準を4から5に引き上げた。彼女は「パンデミックが差し迫っているとの強い警告」と述べ人類全体が深刻な危機にさらされているという認識を示した。

 

 突然の大事に対して、チャン氏の一連の決定行動は素早かった。今後どうあれ、これまでの決定と結果の確度の高さに驚く。鳥インフルエンザ一色(一定の方向転換が始まっていた模様)の世界で、かつ経済減速のジレンマの中、畏敬を禁じ得ない。

 

 「国籍を忘れて任務にあたる」。就任時の彼女の言葉だ。氏は中国人で2006年から現職にあるという。また過去、香港における最初の鳥インフルエンザで、猛反対のなか大規模なニワトリの処分を行い、SARSの苦い経験ではその渦中にあったと書かれている。たぶん現場で火中の栗を拾い続けた人なのだろう。氏の警告には耳を傾けていたい。

 

 本日国内でも疑い者が出た。このほか体制が追いつかず、水際で相当数の検疫漏れがあった模様だ。残念だがこれが現実なのだろう。そして自衛隊の医療部門が投入された。検疫の現場はすでに疲労が始まっているのではないだろうか。ぜひ二次感染も回避して欲しい。地域医療の担い手の一人として緊張して備えたいと思う。

新型インフルエンザの第一ラウンド

2009年4月28日(火曜日)

 28日、WHOは前回に続いて再度の緊急委員会を開いた。そこで豚インフルエンザの警戒水準をフェーズ3から4に引き上げた。名称も豚インフルエンザから「新型インフルエンザ」へ。H1N1変異ウイルスの同定からわずか1週間。第一ラウンドで一気にパンデミックへのルートが開けてしまった。

 

 ブタのH1N1はヒトと共通していて、相手はすぐ近くに居たことになる。スペイン風邪から続くH1N1由来の亜型であり油断出来ない。鳥とともにアジアのブタも当面の鍵となりそうだ。
評価はともかく、昔読んだライヤル・ワトソンの「生命潮流」をふと思い出す。ウイルスにも集合無意識(ミーム?)のような同時現象があるのだろうか。地球の表裏から出発した複数の新型が交雑するようなストーリーで。

 

 相手はまだ若く変化自在と考えられる。後追いを余儀なくされるワクチンが安定するのに年単位の時間が掛かるかもしれない。抗ウイルス薬はどうだろう。薬剤感受性とウイルス変異へのモニターは欠かせない。当面タフな根くらべが続く。

 

 好材料が乏しい今、スペイン風邪の徹底した解析は一部で有望なようだ。願わくばこの規模で一旦終息し、時間を稼ぎたい所だろう。一連の経緯は人間があざ笑われているようで悔しい。


右下のルートが如何にもと見えてくる。 

29_2

咳エチケット(大きくしてご覧下さい)

※再び美術館から離れてしまい申し分けありません。

豚インフルエンザ

2009年4月26日(日曜日)

 長くなりますがすでに昨夜、豚インフルエンザについて報道されていた。メキシコで4月23日までに854例を越える感染者と死者は59例ということ。加えてアメリカでも7人の感染が報告された。(当初メキシコの死亡報告は疑いも含めて発表されていました:後日追記)
さらに本日、ニュージーランドでメキシコから帰国した複数の学生と教職員が疑われ、フランスでも2人が疑われていて事態は深刻に見える。

 

WHOではこの度の感染が
①動物からのものであること。
②患者は若年者に多いこと(乳幼児と老人は少ない)。
③地域を越えて発生していること。
などから新型インフルエンザの可能性を示唆している。

 

 25日のジュネーブにおけるWHOの緊急委員会で、フェーズ1~6段階の警戒水準で3(人への感染は無いか、非常にまれ)としている。一方フェーズ4(小さな集団で発生)への移行を真剣に懸念している模様。フェーズ3はすでにパンデミックを視野に置いたレベルであり、4・5に入ればパンデミックの可能性が現実味をおびてくる。はたしてどう動くのだろう。当面最高度な課題にちがいない。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090426ddm001040104000c.html?link_id=RAH05

 

 ところでニュージーランドで確定診断がつけば、アジアへの拡大が心配され、そこでの流行はパンデミック(フェーズ6)のカギとなるかもしれない。
それにしても何故メキシコだったのだろう。鳥インフルエンザの報告が無かった国で。ウイルスの専門家ではないけれど何か奇異な感じを受ける。これはウィルス自身が生き残りを賭けた大きなストーリーのほんの始まりなのだろうか。ならば人の英知は?

http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/map-ai2009/tori090424.gif

 

 予防と治療では、すでにワクチン製造に向かっているはずだが、当面存在しない。一方タミフルとリレンザは有効らしい。
まずは体温と急なだるさのチェック、帰宅時のうがいと15秒以上の石けん手洗い、鼻水・くしゃみ・咳の清潔対応など念のため丁寧にしていたい。

Img_7004_2

写真は診療所に入った公式連絡のファックス。内容が重複して大量だった。

・厚労省の関連ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/

・外務省の関連ホームページ
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=264

飲み込み。そしてシーグラス。

2009年2月11日(水曜日)

  休日だったが午後に往診があった。比較的安定していた脳梗塞の方。しかし数日来ほとんど飲食をしなくなったという連絡。ご本人はまだお若い。よく聞けば飲み込み障害のためひどくむせた日の恐怖感が引きがねと考えられた。早めに専門的なリハビリを受ける事にして点滴をした。

  ところで日本は技術大国であり、とりわけ微細なテクノロジーに優れている。一方、飲み込み障害の裾野は広く深刻な課題だ。これには口腔、咽頭・喉頭、食道などの極めて複雑なメカニズムが関係している。ナノテクノロジーを進化させている今、飲み込みを補助するコンパクトな装置を願ってやまない。

 やや穏やかな昼間だったので、近くの海に寄った。昨年7月、浜辺でシーグラスと貝を拾い、秋には海に戻そうと書いた。しかしそれが子どもたちや孫に喜ばれて、シーグラスはそのまま我が家にとどまった。その後、私が一番気に入ってしまい、暇をみては海へ行くようになった。

インフルエンザ

2009年1月30日(金曜日)

 1月半ばから、当地でもインフルエンザが猛威を振るっています。タミフル耐性(効かない)が一部言われ、緊張します。一方、経過中の脳炎、異常行動へのご家族の不安や、一歳未満児へのタミフル投与は変わらぬ課題です。このことで身近な経験がありましたので記し、全体の感想を述べてみました。

 

【一歳未満児へのタミフル】
 薬品発売元の見解は、一才未満児にタミフルの有効性は確立していない、控えて、という主旨です。
ところで先日、生後10ヶ月で40度を越える発熱のお子さんが見えました。悩みましたが、クループという気になる兆候が見えましたので抗菌剤と共にタミフルを使いました。
念のため1日目に2回、ご家族に電話で様子を尋ねました。初回の服用後2時間ほど経って嘔吐があったと聞き少々心配でした。しかし以前から咳こみの際、嘔吐はよくあるということ。「効果を期待して続けましょう、何かあったら連絡して」と伝えました。
翌日の昼、随分元気になってきたと知らされ、ほっとしました。経過は順調で、タミフルを最後まで続けました。 

【脳炎、脳症の心配】
 昼にタミフルを服用した園児が夕方さらに熱が上がり、「奇妙な独り言を言い始めた」と親御さんから電話。
「高熱や昼寝の目覚め前後に、うわごとを見ることがある」、「念のため冷たいお水をあげてみて」とお話しました。
翌日お母さんが来院され、「昨日はお水ですぐしっかりした。今度はこの子が発熱」、と別のお子さんを連れてこられました。ご家族も大変ですが、お母さんに前日よりたくましい印象を受けました

【全体の感想】
一才未満といえど、心身の反応は数ヶ月単位で変化し発達します。この期間のタミフル使用にもっとこまやかな見解を期待したい。
・脳炎、異常行動の備えでは、当然ながら観察の大切さを実感します。
・日本はタミフル頻用の国、一方で流行は深刻。常に確度の高い情報が期待される。
・現在、ワクチンの手応えがいまいちで、やや気がかりです。
・6人中5人のご家族が一気に発症するなど、確かに近年にない強い流行です。
・今のところ高齢者の方たちが比較的お元気なのが幸いです。

せん妄

2008年11月19日(水曜日)

 ひどく気温が下がってみぞれ交じりの荒天となった。いよいよ越後の冬の始まりだ。荒れ模様の夜8時すぎ、あるお宅から電話があった。ショートステイを利用中の夫が、昨晩から寝ないで騒ぎ出したので家に帰された。家でも妄想にとらわれて大声や怒鳴りが止まず、診て欲しいという訴えだった。

 

ご本人は、肺疾患のため在宅で酸素吸入をしている高齢の男性で、奥さんと二人暮らし。酸素療法では鼻に付けるチューブが鬱陶しくて、外したがる患者さんは少なくない。しかし一旦外すと酸素不足のため、特に高齢者では意識の濁りを生じてひどい症状が現れる場合がある。今回の方は施設でしばしばチューブを外し、介護士さんも苦労したようだ。この日ご本人は、介護士さんが付けたチューブを噛み切ろうとして、自分の指まで噛んで負傷したという。

 

ところで浅い睡眠や一定の酸素不足,発熱、時に薬剤で生じる意識の混濁・混乱はせん亡と呼ばれる。かって99才のおばあさんは、庭に何十匹ものサルが攻めてきたと言って、長いホウキを手に一人で立ち向かった。ひるね直後のせん妄で、夢と現実の混乱が鮮明な幻覚を生んだと考えられた。往診に伺うと、庭に面したガラス戸はすべてめちゃめちゃだった。家族は呆気に取られていたが、ふとんに戻ったご本人は、サルを退治したと意気揚々だった。普段寝てばかりいる老人でも、強い観念に襲われると信じ難いエネルギーを発揮することに驚いた。

 

今夜の電話の向こうでは怒鳴り声がして、奥さんの声は震えていた。ふだん電話の背後に聞こえる怒鳴り声や泣き声、あるいは悲鳴は緊張する。今夜は、出掛ける前に「優しくそばに座ってみてください。そしてそっとチューブを付けてください。駄目でもくりかえして」と告げた。患者さん宅に着いてみると家は静かだった。「いま寝ました」、奥さんの声がまだ少し震えていた。チューブはちゃんと付いていた。数十時間も眠っていなかったのだ。本人は布団にくるまり丸くなって眠っていた。
 医療には薬の要らない場合もあろう。何かあったらまた電話して、と告げて出た。あられ混じりの風雨のなか、奥さんが傘を差して車まで付いてくださった。

可愛い園児

2008年10月24日(金曜日)

 長い晴天がようやく雨に変わりました。午後1時から近くの保育園で健診をしてきました。100人も続けて診ますと聴診器でひどく耳が痛んできます。しかし子どもたちのまぶしさは心地よいものでした。
10年前に比べてゼロ才児がとても沢山になりました。この小さな児たちの健診の終わり頃、年上の児たちが入室してきます。すると入って来た小さなお兄さんお姉さんは、保育士さんに抱かれているゼロ才児を次々に撫でたり頬ずりをしたり、抱こうとしました。自分もまだ赤ちゃん風なのに下の児を可愛がることが嬉しくて仕方がないという顔でした。

 

子どもたちの情景をみていて、皆ずっとこんな優しい人間でいてほしいと、祈るような気持ちにさせられました。

 

秋雨の保育園

晩夏 -雲の秋-

2007年8月24日(金曜日)

昨日、新潟で医師会の会議が早く終わりましたので帰路は高速を止めて、夕刻迫る頃海沿いの国道を走りました。久しぶりの浜道、雲すがすがしく佐渡も間近に見えました。
柏崎の通過はやはり胸が痛みました。一帯では暮れてもなお復旧作業が続けられていました。
帰宅すると柏崎の方からお手紙が届いていました。仮設に入られたそうですが、お仕事を再開されほっとされたお気持ちが伝わってきました。

 

角田岬灯台

 

越後七浦

いつ見ても美しい

 

サーファー

佐渡を背に入り江を独り占め

 

米山を望む

柏崎方面はやはり胸が痛みました。

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