樹下だより
クリスマスイブ
今夜は、知人ご夫婦の所で食べ物を持ち寄って気軽な会食。昼間、妻のローストチキンがうまく焼けますように祈った。
光の織物
カメラを横に振って樹下美術館のイルミネーションを撮り、それを縦にしてます。
さわやかなご夫婦の家で、羊飼いや星の歌を歌った。歌いながら、これからはまた昔のようにもう少し祈ってみようと思った。
マッシュルームスツールがパリ装飾芸術美術館のパーマネントコレクションに
樹下美術館の絵画ホールに2客の愛らしい椅子が置かれています。マッシュルームスツールです。
このたび当椅子を共にデザインした山中阿美子さんからマッシュルームがパリ装飾芸術美術館のパーマネントコレクション(永久収蔵)に選定されたと知らせがありました。とてもうれしいニュースです。
昨年のパリにおける日仏修好150周年記念行事「日本の感性展」で展示された
マッシュルーム (山中さん夫妻のホームページから)
父の絵と共に、樹下美術館のマッシュルーム
阿美子さんは当館常設展示の画家倉石隆氏のご長女です。椅子は彼女の大学時代に、ご主人の山中康廣さんら三人の学生グループで応募したコンクールの入選作品です。第1回天童木工のコンクールでした。
受賞は1961年ですが、製品化デビューは2003年。形状のユニークさによって、今日のテクノロジーを待って42年間も眠っていたという物語があります。
マッシュルームは若い人達を中心に変わりない人気を維持しています。時代が変わっても、学生だったデザイナー達の若い感性が伝わるのでしょうか。
山中さんご夫妻、偉業おめでとうございました。アルネ・ヤコブセンの椅子たちの仲間入りですね、素晴らしいです。.
年内でこんなに降られるのは初めての樹下美術館
倉石隆の「杉の林」
現在、樹下美術館で展示されている倉石隆作品に「杉の林」があります。今日は少し風変わりなこの絵のことに触れさせていただきました。
軽く手を広げたような大きさのキャンバスに描かれたのは7本の杉です。風景画にしては山もなければ家もない心象風な作品だと思います。油彩ながら、松林図を描いた長谷川等伯の墨絵を思い起こさせます。
さて杉は倉石にとってやや特別なもののようでした。氏の故郷新潟県高田(現上越市)には、寺町をはじめ宅地や神社など至る所に大きな杉があります。しかし高田時代の倉石は、杉は重々しく陰気だと言って嫌がっていた、と奥様からお聞きしました。
当作品の制作年代は1965~75年、故郷高田を離れて15~25年が経っています。描かれた杉に重圧は無く、枯れ枝が飄々と絡みあう頼りなげな樹として描かれました。全体におだやかな白が薄くかけられ、どこか画面を愛おしむような感触が伝わります。
もしかしたらこの杉は倉石自身かと思いました。内外に複雑な枝を絡ませたり回転させながら重心をとり、頼りなげであっても真っ直ぐ立とうとする(あるいは立っていなければならない)存在です。一方作業として、素早い類円とこすりつけたような濃い葉の集まりが妙味として作者を惹き付けているようでもあります。
「ボクは下手だなあ」、は倉石の口癖だったそうです。長く忌み嫌った故郷の重いモチーフを敢えて選び、向き合ってみる。その時、何らかの開放があって淡々たる、あるいは楽しむような心境が去来したのかもしれません。作品は倉石らしいモノクロームで、一気に筆が進んでいるように感じられます。
倉石の作品には時として謎めいたものがあります。杉林もその一つでしょう。本日昼、雪中の樹下美術館で立ち止まった時、あらためて作家における年月の作用を思ってみた次第です。
「杉林」は、陶芸ホールの一番奥で、陶齋の華やかな色絵磁器と絶妙な相互作用を醸成しています。
暖冬という大方の予想を裏切って当地は豪雪模様です。降りしきる中、三人のお客様が見えました。突撃の勇気とご厚情に胸熱くなりました。
寒波が来て
冬型の気圧配置となってしばらく寒波が続きそうです。樹下美術館の一帯は今朝から雪模様となりました。荒天の中を何組かの方に来館して頂いて本当に有り難うございました。
雪見のカフェ。
庭のヤブコウジの実が葉陰で上手に雪をよけていました。寒さに負けず赤々と仲の良い様子でした。
齋藤三郎作、寸雪庵好み香合
茶道の茶会では、茶室は炭火にお香を添えて香りを立たせて清められます。その際のお香を入れる器が香合です。お茶道具の中では最も小さな器でしょう。
大きさ縦4㎝横5㎝奥行き2,7㎝
このたび上越市内の道具屋さんを経て、華やかかつ上品な香合が樹下美術館にきました。齋藤三郎(陶齋)さんらしい味わいの良い赤地に金で雪の結晶が綴られています。上越高田にゆかり深い寸雪庵主のお好み道具。由緒もできばえも素晴らしく、是非にと求めました。
器を入れる木目の効いた小さな杉箱には、陶齋の字で「寸雪庵好雪花文金彩屏風香合」と書かれていました。以前にも触れましたが寸雪庵は亡き濱谷朝さん(写真家・故濱谷浩氏夫人)のお茶室の名です。詩人、フランス文学者の堀口大學が名付け親ではなかったでしょうか。
少々驚いたことに箱のヒモは普通には布紐ですが、当箱は革紐があしらわれていました。なんともおしゃれな仕事ぶり、箱にも惹き付けられます。
その昔、たとえ疎開も一つの縁とはいえ、上越に濱谷浩夫妻や小田嶽夫氏、さらに堀口大學ご一家が歩いていた時代があったのですね。赤い椿の雪の夢、などと呼んでみたい気持ちがします。そしてみんなに愛された陶齋もまた、思う存分力を発揮していたことでしょう。
※濱谷朝さんは「女人日日(おんなのひび)」という書物を残されました。日ごとの営みやご自分の事で、新潟の話が沢山書かれています。写真や本を見ますと、朝さんは博多人形のように(またそれ以上に)美しく、奥ゆかしい生活感覚の持ち主だったことがわかります。
※「女人日日」は来週からカフェに置かせて頂きます。
※当香合は来春の開館で展示致します。
落ち葉と風の加減
閉館前の誰も居なくなった美術館でお茶を飲んだ。目の前の芝生一面にモミジが散っていた。落ち葉の元は北側にある高さわずか2メートル半くらいの株立ちの木だ。
それにしてもこんなにうまく平均して散っているのは珍しい。芝生は南向きに傾斜しているので、今頃は大抵南の風下に吹き溜まる。
それが今日は、あたかも手で置いて行ったように全体に散らばっている。赤みを帯びた芝生と、風の加減に感心しながら熱いお茶を飲んだ。今年の秋もあとわずか、名残を惜しんで一息ついた。
小生のボタニカルアート作品展
今朝の新潟日報の紹介記事。小林古径記念館元館長の小林新治さんがお書き下さった。
今日から11月30日まで新潟市秋葉区で小生の作品展が始まりました。およそ10年振りのことで、やはり気恥ずかしさを否めません。
この度の発端は、9月に樹下美術館をお訪ね頂いた新潟のお客様のお話から始まりました。館内で販売していた小生の絵はがきをご覧になって、ぜひ作品展をと申されました。
●会場は新潟市秋葉区美幸町3丁目19-3「小さなアトリエ悠(はるか)℡0250-23-2067」
●最終日は11月30日(月曜日)です。
ご自宅をギャラリーとして開放されておられ、5つの部屋に30点の作品が展示されました。お暇の節にお訪ね頂けましたら、有り難く存じます。
※展示会では小生の作品販売を致しておりません。
※樹下美術館ではトイレの鏡脇に「館長の絵」として季節ごとに一点架けさせて頂いています。
倉石隆の挿絵原画/15少年漂流記
樹下美術館常設展示の画家、故倉石隆は生涯人物の油彩画を中心に制作しました。内省の画家にあって自然な志向だったにちがいありません。
一方で見逃がせない仕事に挿絵があります。筆を振るったのは少年少女向けの本でした。物語に応じて銅版画、水彩、スクラッチボード、鉛筆画、ペン画など多彩な技法が駆使されました。挿絵の一枚一枚から、子どもたちの胸ときめかせ感動を願う倉石氏の思いが伝わります。
向こう側の男性は倉石氏ご自身によく似ていると思います。
氏は30冊近くの本に挿絵を描きました。当館は数冊分の原画を保管し、いずれまとまった展示をと考えています。ここでは「15少年漂流記」(ベルヌ名作全集12 辻昶 訳 1968年 偕成社)の原画を一部掲載しました。優れたデッサン力を有した倉石ならではの動きと感情表現が伝わり、胸躍らされます。
制作においては熱心に考証を研究していたと、奥様からお聞きしました。
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当原画は黒インクのペン画です。口絵用の一枚だけが水彩で彩色されていました。
晩秋の木村茶道美術館
紅葉もお終い。しぐれる中、落ち葉の掃除が進められていました。
今月から樹下美術館ではお抹茶をお出ししています。今日火曜日は休館日、昼休みにスタッフと木村茶道美術館を訪ねてお抹茶を頂きました。
茶室では、出されたお茶碗を左のお客さんの間に置いて「お先に」、右のお客さんには「お相伴します」。それから手のひらに乗せ、押し頂いて少し茶碗を回す。飲んだ後は茶碗を戻し飲み口を清める。少し予習をして揃って美味しく飲んだ。
本日お点前された方は、初めて訪れた25年前当時の人だった。しばらくお目に掛かってなかったので、とても懐かしかった。久しぶりに同じ場所で同じように同じ人に出会うのは、めでたいことだと思った。
堀口大學のマッチ箱
昨日ある捜し物の折りにマッチ箱が二つ出てきた。当館の開館前夜に齋藤三郎氏の最初のお弟子さん、志賀重人氏から送られた資料の一つだった。恥ずかしいことに当時のあわただしさにかまけてマッチは書棚で眠ったままだった。
あらためてラベルを見ると詩人・フランス文学者堀口大學の詩だった。疎開で妙高へ来越された大學ご一家は戦後昭和25年まで高田市(現上越市)に住まわれた。この詩は堀口すみれ子さんの著書「虹の館」にもあり、マッチには大学の筆で以下が印刷されていた。
「寸雪庵の冬囲ひ まがりなりにも仕上たか 三郎さの登り窯 火は今日あたりはいったか 時雨の音をきヽながら まくらの上におもふこと 堀口大學」
寸雪庵は後に写真家・故濱谷浩氏の奥様となる朝(あさ)さんが高田で営まれた茶室だ。朝さんは魅力的な人だったらしい。ちなみに文藝春秋2007年の創刊85周年記念号で「昭和の美女」ベスト50に選ばれている。外交ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏が推薦された。
そして詩文中の「三郎さ」は当館展示の陶芸家・齋藤三郎氏だ。時雨れる夜、朝さんの雪囲いと三郎氏の窯を案じる詩人。その日、大學が床についたのはほぼ60年前の、厳しい冬へと向かう高田だった。
後に文化勲章を受ける先人が残した素朴なマッチ箱。新しいマッチ棒で擦ったら明るい火が灯った。
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