貴重な水、貴重だったポンプ。

2015年5月27日(水曜日)

暑くなり、水が貴重な季節になってきた。
地元上越市大潟区は沿岸の砂丘地で、地域によって昔から水で苦労してきた。

私が小学校低学年の頃まで、我が家は100メートルほど先の井戸から水を運んでいた。
水を汲んだ桶をテンビンの前後に掛けて担ぐのである。
水汲みは嫁が行い、重い桶は揺れるし途中に坂もあって辛い仕事だった
佐賀県出身の母は「越後に来て雪で悩むのはいいが、水で苦しむとは思わなかった」と言っていた。

先祖が井戸を掘ったらしいが、出なかったと伝えられていた。
見かねた父は名人という「井戸源」さんに頼み、夏に向かって井戸掘りを始めた。

組まれたやぐらの滑車を使い、ロープをくくり付け、枠で囲った穴へ降りて行く井戸源さん。
やぐらの脇には掘った土砂が日に日に高く積まれていった。
学校から帰ると「出た?」と毎日母に聞いた。
出てもいい深さを十分越えても駄目で、母は井戸源さんが心配だとよく言った。

それがある日ついに「出た」。
きれいな水を期待したが、実際は茶色く濁っていた。
それでも何日かすると澄んできて、水はとても冷たかった。

鉄管と電動ポンプを取り付て高い水槽にくみ上げ、水道組合を作り近隣に配管した。
深井戸のせいでどんな年も涸れることなく、後々まで父は感謝された。

ポンプ (2)空き地に残されている手こぎポンプ。
ポンプは畑でよく見るが、旧国道沿いの空き地のは家庭で使っていたものだろう。

後に自治体の水道が整備され、わが家の井戸は厚いフタをされてそのままになっている。
事情によって家が壊された沿道の空き地に、ぽつんとポンプだけ残されているのを目にする。
貴重だった水、貴重だったポンプが潰されずに残っているのも分かる気がする。

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