お二人の名前。

2019年11月13日(水曜日)

とうに90才を越えられて今なお元気なクマさん。もうこれ以上こどもを死なせたくない、という親の願いが込められた名前のことを2012年1月に書かせて頂いた。

狭い私の世界なかから、本日はその後印象に残ったお名前を二つ書いてみたい。いずれも短い時間にお聞きしたものですが、時代を越えて親の願いが伝わってくる。

“ヤサシ”さん。
亡きお母さんの名が「ヤサシ」さんという方に出合ったことがありました。優しいのヤサシです。
実際はどうでしたか、と尋ねますと、厳しい母だったと仰いました。ヤサシさんは若いうちにご主人に先立たれ、お一人でお子さん達を育てられ、普段決して優しくはなかったそうです。しかしどんなに叱られた時も、本当は名前の通り優しい人なんだと思うようにしていたので、不安になることはありませんでした、と伺いました。
私自身はじめて耳にした名前“ヤサシ”。出来れば名付けたお爺さんお婆さんのことも尋ねてみたいと思いました。ご両親は昭和初期のお生まれではないか、と想像しました。

“栞(しおり)”さん。
ご本人のお名前です。長く当方に通われ、特に名を気にとめなかった栞さん。ご本人が80才半ばになるころ、気になって尋ねてみました。
名の由来が考えていた以上のお話で少々驚いた次第です。以下お話の趣旨をしるしました。
「私の母は当時としては進んでいたのでしょう、“平塚らいてう”に心酔していたようです。貧富や男女の差別に立ち向かい平等な社会を目指そうと生きる“らいてう”を尊敬していたのです。
「栞」という名は、文字通り本に挟むシオリ。
読書で、これまで読んできた所にしっかりシオリを挟んで区切りとし、明日からその先へ新たに歩むという、意味だと聞きました。らいてうを尊敬する親の思いがこもった良い名前だと思っています」
というお話でした。
東京の大手会社で長年重要な部所の事務をされ、ダンスが好きだったと仰り、油絵も描かれる。来院以来いつも検査結果をしっかり確認され、生活のアドバイスを求められる栞さん。夏休みに大勢の孫ひ孫さんが来れば、民宿です、と言って台所に立つ人。お話を聞いた後いっそう生き生きして見えるようになりました。

掲載の椿はいずれも「西王母」で、現在美術館の入り口向かって左側に咲いています。
暑さ厳しい夏でしたが例年に比べ花数が多く、びっくりしている次第です。ただ傷んでいるものも沢山あり、良いのを選びました。

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