齋藤三郎の展示替えで全ての作品に書字が見られるようになり,館内の雰囲気が変わりました。

2021年8月25日(水曜日)

今年の齋藤三郎(陶齋)の展示は「齋藤三郎の絵と書」です。
本日水曜日の休館日はその後半(明日8月26日から)の展示に向けて、12点の展示替えを行いました。

これによって全ての作品に文字が入った展示となり、場内の雰囲気がかなり変わりました。文字があることで、人の気配や和やかな雰囲気が漂うように感じますので不思議です。

以下は追加した12点の中から一部をご紹介しました。

 

文房具:焼き物による筆、鞘、硯、硯屏(けんびょう;塵よけ)、水滴、筆架です。
硯と硯屏には良寛の詩から“吾与筆硯有何縁云々”が書かれています。

硯の脇にも書かれた全詩の読み下しとして、

吾と筆硯と何の縁か有る
一回書き了れば又一回
知らず此の事 阿誰にか問わん
大雄調御 人天師

が読め、口語訳として、

わたしと筆や硯とは どんな縁があるのだろうか
一回書き終わったのに またまた一回
このような縁についてわたしは知らないし、そもそも誰に尋ねたら良いのだろう。
ただ知るのは御仏だけだ

という意味のようです。

赤絵の福貴長春文 灰皿。
よく富貴長春と書iと書いていましたが、福貴となっています。
中国の言葉で、幸福と長寿は貴いという意味です。
一方で富貴は牡丹、長春はバラという意味もあるようです。

 

 

杉田敬義(父)宛書簡屏風。
手紙を貼って茶道向きの屏風にしました。

 

手紙にはススキが描かれ、品のある文字がしたためられています。
最も古い作品の一つ「弥彦鉄鉢茶碗」を置き合わせました。
昭和23年頃、弥彦神社で行われた茶会に呈されたお茶碗です。
書かれている文字は残念ながら読めませんでした。

 

 

先日ブログに書きました二合半の看板と「染め付け街道屋どんぶり」

正面右奥に展示しています。看板は陶齋がひいきにした店の為に書いたものでしょうか。味の良いどんぶりとともに館内に和やかな雰囲気が漂いました。

 

かって展示した色絵番茶器揃えです。
梅、椿、竹の模様とともに釘彫りで詩文が書かれています。

詩文を調べてみますと、良寛の詩だと分かりました。

読みとして、
間庭(かんてい)百花発(ひら)き
余香(よこう)此の堂に入る
相対して共に語る無く
春夜 夜将(よるまさ)に央(なかば)ならんとす

訳として、
静かな庭に沢山の花が咲き、香りがこの部屋に入る。
共に向きあい語るともなく過ごす春はもう真夜中になろうとしている。

何度か書きましたが、齋藤三郎の森羅万象への理解と高い教養にあらためて驚かされます。
同時にそれを理解したファンたちが居たことにも驚くのです。

文字が入ることによって作品にいっそう和みや深みが現れるようであり、その様式は齋藤三郎の骨頂の一つではないかと、実感させられました。

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