美術作品を観て気を失うことがあるらしい その2「スタンダール症候群」

2023年11月7日(火曜日)

去る11月2日の当欄、NHKBS「フェルメールに魅せられて“史上最大の展覧会”の舞台裏」で展覧会関係者の一人が「かってフェルメールの作品を観て気を失った」と述べていた。そのことに関連してその昔スペインでゴヤの「裸のマハ」を見て失神した知人の話を当欄に書いた。

記した後、気になり「美術鑑賞 気絶」で検索してみた。すると真っ先に出るのが「スタンダール症候群」だった。「美術 失神」でも「アート 失神」あるいは「美術 気絶」もみなスタンダール症候群(以下 ス症候群)が真っ先だった。

だがそれはいずれも期待した“衝撃的な美に直面した時の精神反応”ではなかった。

由来は小説「赤と黒」の作家スタンダールが19世紀前半に初めてイタリアへ旅行した際、フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂で壮大なフレスコ画を見上げていた時、突然めまいと動揺に襲われしばらく呆然としてしまったということから来ていると記されていた。

サンタクローチェ聖堂の壁画
(photo libraryより)

それに関して20世紀後半、イタリアの心理学者が同様の症状を起こす外国人観光客が多いことからスタンダールの例にちなんで「ス症候群」と命名したというものだった。

現象は、強いあるいは長時間の上向きによる後頭部の後屈(この場合仰向け)からくるもので、頸椎を通過するある動脈(椎骨動脈ついこつどうみゃく)が圧迫され脳循環が受ける影響によるというものだった。
しかし同じ状況で誰にでも症状が起きるとは限らない。脱水、疲労、解剖学的な個人差、代謝異常などが関係していることだろう。
また症候の命名者は”高揚した気分”なども付け加えているようであり、自律神経系の反応が加味されるのかも知れない。

ただ外国人に多いと記されるていることがやや不思議であり、また東大寺大仏殿ではどうなのか、さらに上向きの仕事がある技師や職人さんも気になるところだ。

いずれにしても強く上を向くのは要注意と、かって脳神経外科医からも聞いている。
このたびはほかであまり見つけられなかったが、美術、アートの衝撃によって失神することがもっとあるものか探してみたい。


「But Beautiful」

愛は喜びもあれば悲しみもある、笑いもあれば涙もある。だが美しいと歌われている。

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