さまざまなな契機で。

2012年7月26日(木曜日)

80半ばを過ぎたAさんは、浜や松林の清掃ボランティア、大がかりな日曜大工など何でもなさった方だ。ところがこの一両年頭が重い、胸が苦しい、やる気が出ない、と嘆きが先立つようになった。

 

いくつか病院を受診されたが、脳動脈硬化と老人性うつと言われるだけ、と険しい顔で不満を口にされる。家では何かと奥さんに辛く当たるようにもなった。

 

デイサービスへ行って生活リズムを変えてみることを何度か提案した。しかし、まだそんな所へ行く年ではない、の一点張り、活発だったAさんなら仕方ないのか。

 

試みに精神安定剤を変え、さらにここを受診してみましょう、とある病院を紹介した。

 

数日後の夜間、今度は奥さんが片方の眼を中心に三叉神経痛に似た痛みの症状を訴えられた。往診先で神経内科を受診することに決めると、傍らのAさんを見ておや、と思った。

 

いつもの険しい顔が和んでいる。聞けば、本日受診した病院は女医さんで、とても親切だったと仰る。優しい女医さんが効いたのか、変えた薬が効いてきたのか、以前のAさんらしい温和な表情が蘇っていた。

 

さて、奥さんは4,5日の入院の後、無事帰宅された。奥さんの入院中、何処へ行った、何の病気かと、Aさんは大変心配されたらしい。

 

奥さんの退院後、ご夫婦は以下の様な話をされたという。

「今度私はデイサービスに行ってみようと思うの。お父さんもどう、一緒にに行ってみようさ」

「おまんが行くならオレも行ってみるか」

 

思ってもみなかった相手の入院、それに女医さん?薬?老後であっても、いや老後ならばこそ、人や関係はさまざまな契機で変ることがある。

 

このたびは良い方向が期待される。やはり諦めることなかれなのだ。

 

夕陽と電車ほくほく線、夕焼け電車。

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