陶齋の呉須搔落どくだみ文湯呑(ごすかきおとしどくだみもんゆのみ)。

2015年5月20日(水曜日)

先日樹下美術館に齋藤三郎(号・陶齋)の湯呑が新たに加わりました。
呉須(酸化コバルトを主成分とした鉱物顔料)による青い器です。
顔料を全体に掛けた青い地を、クギで掻いてどくだみ模様を見せています。
※呉須は染付(そめつけ)と呼ばれる藍色の器の絵付け全般に用いられます。

 

呉須どくだみ文湯呑呉須どくだみ文湯呑
高さ7,4×口幅6,0㎝
この様式は樹下美術館では初めてでした。

湯呑を見て新潟県立近代美術館で何度か見た呉須搔落牡丹文瓶(ごすかきおとしぼたんもんびん)をすぐに思い出しました。

昭和18年、中国への出征前に製作されたとされるこの瓶(びん)の青の美しさは、印象的でした。

 

呉須搔落牡丹文瓶陶齋作「呉須搔落牡丹文瓶」
「泥裏珠光 越後の陶齋」 齋藤旬堂著 毎日新聞社 1998年10月5日発行 より。
当作品は現在新潟県立近代美術館に収蔵されています。

このたびの湯呑は青い地のほか、文様を掻き落としているところと線を加えるのも似ていました。
陶齋の呉須は貴重な中国産で、唐呉須と呼ばれるものでした。

署名力のこもった湯呑の底の署名「齋」。
高田のかなり早い時期、昭和20年代中頃の作品かと思われます。

戦中、死を覚悟した中国への出征。
後に負傷するも命得て復員し、高田で築窯した陶齋が大切な呉須で作っ湯呑にちがいありません。
鮮やかな青、はつらつとした文様、しっかり決まった署名。
小さな作品ですが、再び作陶できる喜びが伝わります。

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