草取りして月
午後からの休診日で夕刻に庭の草取りをした。美術館を営んで3年、展示とともに大切なのは庭。庭に大切な作業は草取りだとなかば悟っている。
草取りは無心の時間という点で精神にもいい。またある種修行の感じもする。終えて手を洗うと庭も気持ちもさっぱり。
今夕の月、本当はもっと大きく見えるのに。
あまつさえ遅くなって月に気がつく時など、自分も花や草であるかのような気持ちがよぎる。
家に帰って昨日頂いたタケノコを食べた。下さった方が「ジャガイモやタマネギなどは入れないで」というタケノコ汁が美味しかった。桑取のタケノコ。この時期なのにとても柔らかく味も濃かった。
尾神岳、浦川原、桑取、そして秘密。
尾神岳、浦川原、桑取、そして秘密。これらはいずれも今年頂いたヤマタケノコ(ヒメタケノコ)の産地だ。毎年決まった方が得意の場所に出掛けては分けて下さる。ある方は決して場所を明かさず、秘密ですと仰る。
昔、子どもたちとさかんに出掛けた尾神岳、浦川原は月影小学校と雅楽、濱谷浩さんの桑取、そして秘密の場所。それぞれ何がしかの思いを絡ませて楽しませて頂いている。麗しい山の土と水が育てたタケノコは味・香り・歯ごたえ、見た目、みな良くて飽きることがない。
その昔昭和30年前後、毎年家族で池の平へ出掛けて池廼屋さんに泊まった。翌朝おにぎりを作ってもらいイモリ池を通って先へ歩く。すぐ右手に東大の寮があって、そのあたりから小さな谷川に沿ってワラビやタケノコが沢山採れた。持参した飯ごうに川の水をすくって味噌を溶き、コッヘルで炊いてタケノコ汁を作った。カッコー鳴く草原の昼食は美味しかった。毎年採り続けても無くならないタケノコに少々驚かされる。
百合のような人
今日、堀口すみれ子さんは高田寺町の長養館で二代陶齋・齋藤尚明夫妻と昼食の後、遊心堂を訪ねておじいちゃんと旧交を温められた。
滞在中の彼女は、ゆかりの上越で父・堀口大學を語れることへの感謝を何度も口にされた。
今日衣食は足りている、それらと共に学芸をより身近に。このたびの来越ですみれ子さんが残されたエッセンスはそのようなことではなかったか、と思った。
午後も半ば、数々の出会いを残して直江津から帰途につかれた。すみれ子さん、本当にお疲れ様でした。そして有り難うございました、またぜひいらして下さい。
見送りをして樹下美術館に戻ると、梅雨空のもと庭の生気は旺盛だった。ナツシュウメイギクが静かに咲きそろい、キョウガノコとアスチルベは鮮やかで、アジサイは負けじと花足を早め、百合が出番を待っていた。
すらりとして気品があり、堀口さんは百合のような人だった。
堀口すみれ子さんの講演会
今日、樹下美術館は陶芸ホールで堀口すみれ子さんの講演会を無事終えた。大切な人と満席のお客様を迎えて、何故か直前は火の用心を心配していた。
すみれ子さんは、講演が近づくにつれて上越を訪ねることが、そこへ帰るような気持ちになった、と最初に述べられた。お住まいの湘南の風が一気に上越へと吹き込むのを感じた。

堀口大學の生誕から海外、そして高田の日々までが澄んだ声と貴重な写真で語られた。心に響く詩や楽しいエピソードも交えられた。そして肉親ならではの自然さで、大學の伝える父とは、母とは、詩人とは人とはが語られた。
3才の大學を残して逝った若き母を襲った病は結核だった。青春時代に大學も喀血する。病をとおして母と同一化しようとする若き日の心情は切ない。
最後に大學がかって上越で得た交流と友情が述べられ、すみれ子さんご自身の三郎さん(陶齋)の思い出で終えられた。
お疲れも顧みず懇親にもお付き合い頂き、最後はジャズバーまでお連れして夢のような一日が終わった。どうか明日また無事でありますように。
堀口すみれ子様 ご来場の皆様、ご協力を仰いだ関係者の皆様、スタッフ、本当に有り難うございました。
Gentle Rain
We both are lost
And alone in the world
Walk with me
In the gentle rain
Don’t be afraid, I’ve a hand
For your hand and I
Will be your love for a while
I feel your tears as they fall
On my cheek
They are warm like the gentle rain
Come little one you’ve got me in the
World and our love will be sweet
very sweet(rvery sad)
Like the gentle rain
Like the gentle rain
Gentle Rain:Composed by Luiz bonfa. Astrud Gilberto sings

Roses are in their latter bloom now.
梅雨の晴れ間に夕焼け
漁船の集魚灯が一つ
梅雨入りが報じられたが、今日の当地は夜半から朝にかけて降っただけだった。
夕食を終えて気がつくと障子が赤々と染まっていた。急いで行った四ツ屋浜から見る海は感動的な夕焼けだった。北の方角には紫がかった佐渡の島影が静かに浮かんでいた。
今まで何度か書かせていただいた通り、自分は何十年来旅行らしいものをしていない。それで今夕の夕焼けなどを見るにつけ十分に有り難くなる。
昨日、存在するものは旅をすると書いた。しかし上記のような毎日は私にふさわしい旅だという実感がある。出掛けない者にも旅があるとすれば、時間は全てのものを旅させていることになろう。はたして旅とは、、、。
さて夕焼けの良いところは、「また明日!」と言うようにすーっと終わってしまうところだ。また、これだけダイナミックな瞬間なのに、テレビと違って音楽もなければ全く音がしないのも素晴らしい(時に波音、風音、ねぐらに帰る鳥の声はありますが)。
高岡からのお客様、そしてシーグラス
北陸も梅雨入りと報じられている。北陸地方である当地上越市は久しぶりに一日曇り空、なんとか雨は避けられた。
今日は富山県高岡市からご家族のお客様があった。ホームページをご覧になって訪ねて下さったようだとスタッフから聞いた。展示とカフェを喜んで下さり、窓口で弟の本「フォルテシモな豚飼い」を求められ、シーグラスの絵はがきも沢山お買い下さった。その後、当館でお世話になっているラ・ソネさんへ向かわれたという。
ところで樹下美術館の窓口カウンターには他の施設のイベントチラシ類が置いてある。それらの一つ一つの重しに大きめのシーグラスを乗せている。
高岡からのご家族に10才くらいのお嬢ちゃんがいらして、シーグラスをとても気に入られた。スタッフがどうぞと勧めると、手に取られたのが写真のグラスだったと聞いた。
高岡へ旅立ったシーグラス。長径4㎝くらいだったろうか。
一連の話はみなうれしかった。シーグラスの方は海岸で見つけた時の写真がパソコンにあった。去年11月21日の日付だった。
海を旅したガラス片が年月をかけておだやかなシーグラスになる。それが近くの海岸で私と出会って樹下美術館の窓口へ。そして今日、高岡の少女に気に入られてまた旅立った。
存在するものは旅をする、、、。これは万物の法則かもしれない。ちょうど、7年の奇跡の長旅を終えた小惑星探査機はやぶさがオーストラリアでカプセルを落とす時間になった。
チマキ
午後、お年寄りの急な腰痛を往診した。骨折でなくてほっとした。
大おおおばあちゃんの診察を終えると、年配のご夫婦はちまき作りに戻られた。奥さんが笹にお米を詰め、ご主人が巻いていく。近くの作業所で出荷用を作り、家では自分たちのを作るという。
立派な笹が使われていた。銅鍋で煮ると笹の色が青いまま褪せないと聞いた。見てると呼吸のあった仕事ぶり、出来たらお持ちしますと仰ってくださった。
これからの季節、梅雨空とチマキはうるわしい田舎の風物詩だ。お宅のまわりの田んぼがいよいよ生気を増していた。
その昔、アカシアの花などを食べようとした私たち。後によそからチマキを頂くことがあった。砂糖入りのきな粉を付けて、あまりの美味しさに頭がヘンになりそうだった。
昨日が三周年だった。
あなた昨日が開館日だったのよ、と夕食中に妻が言った。三周年行事などと騒いでいたのにその日のことを忘れて過ごしていた。
あわてて振り返れば2007年6月10日に開館して間もなく中越沖地震。昨年の私のまちの美術館展出展、今冬の大雪、多くのご厚意。何とか無事に越えた三年間は文字通り日々新たな経験だった。
まもなく記念行事の一つに堀口すみれ子さんの講演会が館内ホールである。お陰様で申込みが定数になり、予約を締め切らせて頂いた。またとても良いタイミングでサントリー(株)関係者の方々の訪問予定が知らされた。それぞれ光栄で嬉しい。
ところで先日、あるお客様が館内のノートに他の方たちのおしゃべりがうるさかったと苦情を書かれた。当館では静かに過ごしたい方がほとんどだ。いわれる「賑わい」は他に任せて、ある種静けさを楽しむ場所であればと思っている。和やかさと静けさ、気遣い合う心、これも楽しみ方の一つであろう。
話変わって、庭の芝生が少々良くない。それで素人判断ながら、肥料が少し入った土をうす目に撒いて水遣りを毎日続けている。
夏至も近く、日が長くなった夕食後の作業は気持ちがいい。すぐ近くの田んぼで連日蛙たちが盛大に初夏を謳歌している。
恥ずかしながら今夕の小生の写真です。これまで顔も出さず失礼致しました。今後ともどうか宜しくお願いいたします。
海を旅した陶片の女の子
食事の部屋の書棚に海へ行った時に少しずつ拾った陶片が置いてある。シーグラスと同じで、海に捨てられた茶碗や皿など(またそのかけら)が海底を旅して割れて細かになり、角がとれたものだ。おしなべておだやかな形状になっている。
なにしろ海はあらゆるものを揺すって揉んで洗う。固くトゲトゲしたものなどみな小さく丸くする。最後は砂にそしてミネラルまでしたいのだろう。ありあまる時間と何かのはずみで命まで作ってしまったのだから、海のなんという根気と力だろう。
いっぽう地上は社会などもあって複雑だ。しかしそこで我々も海と同じようにゆすられ揉まれ洗われる。最後はやはりミネラルだろうが、できれば文化を創ることを期待されている。偉そうにする必要はないが、茶碗と私たちの違いはそのへんかもしれない。
さて昼食後、何気なく陶片をみていると一つのかけらが気になった。
手に取ると突然女の子の顔に見えた。上目づかいで真剣に前を見ている。あごから頬の線も愛らしく愛着を覚えた。
不思議なもので一度そう見てしまうとあたかも女の子が描かれたような気がしてくる。実際は波、渦巻き、秋草などが描かれているようだ。
かけらと私たちは異なる存在だが、こうして楽しく出会えるのも何かのおぼしめしにちがいない。
顔・長径3,5㎝ほど
裏側・高台があり、大きめの皿のようだ
淡紅色のアカシア、そして大連など
15年くらい前、当時上越市大潟区は大潟町で、町の広報誌にリレー随想というコーナーがあった。次の人を指名してコラムをつないで行くもので随分続いていた。思えばこんなところも合併前の良いところだった。
私の番になって、町の貴重な樹木というようなタイトルで書いた。その中で赤いアカシア(ニセアカシア)を一つとして挙げた。
赤といっても薄い赤むらさき色である。よく見ないと分からないが、大潟区蜘蛛ケ池(くもがいけ)の県道沿いに二本ある。かなりの巨木で、久しぶりに花の時期を通ったらやはり赤っぽく咲いていた。心なしか香りを強めに感じたのも15年前と同じだった。
大潟区はアカシアが多い。あたり白一色の花に囲まれてひっそりと色を帯びる姿はけなげだ。
ところでアカシアといえば、昔、家の庭のへりに厄介者のような感じで樹があった。戦争後、中国から引き揚げてすぐの頃、母がそのアカシアの花を炒めて食事に出したことがあった。
真っ白でいい匂いの花を母と採るのは楽しかった。花がフライパンの中で茶色に炒められていく様をありありと覚えている。
しかし食卓に出たものは食べられなかった。苦かったのか家族全員がダメだったように思う。
この時のことは素晴らしい期待が見事に外れる人生最初の記憶かもしれない。
それにしてもサツマイモのツル、アカシアの花、たぶんほかにも、、、。当時母に知り合いもなく、家にはお金も無かった。それで普通は食べないようなものを美味しいよ!と言って料理にした。アカシアの炒め物も初体験だったようで、もしかしたらと思って作ったらしい。最悪の結果に、空腹の家族の落胆と母への非難は如何ばかりだったろう。
ところでその昔、若い母の看護婦として最初の赴任地が旧満州大連だった。大連は大都市で、黒々とした木肌のアカシア並木やヤマトホテルがあったと聞いた。父と出会う直前だったらしい。それが耳に残っていて学生時代に「アカシアの大連」(清岡卓行著、1969年度芥川賞受賞作品)を読んだ。良い本だった。
済みません、話が色々になりました。
貴重な明治生まれ
美術館たる者、たとえ小館であっても図録一冊出せなくてそれとは言えない。このところ決めた期限が迫って懸案の制作に追われる毎日となった。いつしか大小400点に迫った分量もあるが、日頃の整理の甘さを痛感させられている。
それで毎日のように明け方まで格闘が続く。若ければもっとはかどるのに、一日は35時間くらい、一ヶ月は45日くらい欲しい、など考えるまでになった。それに何とかノートも、、、。
さて一先ず色々置いて、私が在宅でフォローしている方に明治生まれの人が4人いらっしゃる。いずれも女性でそのうち3人は100才を越えられた。4人のうち3人の方が杖で室内を歩行され、デイサービスへも通われる。お一人は押し車を使って近隣を散歩される。
残念ながら今日訪ねた方は骨折後に寝たきりとなられた。よくうとうとされているが、私たちが訪ねると一転して言語が冴える。今日の話をつないでみると次ぎのようになった。
「おや先生、相変わらず惚れ惚れするようないい男ですねえ。私がもっと若ければ本当に惚れるところですよ。
これでも学校時代の私は飛び競争の選手で、試合で直江津や柿崎までよーく歩いて行ったもんです。マイクロバスなんて無かったですから。
その時の先生がまたいい男で、私を好きだったらしいです。しかし私はまだ若かったからそんなことは分からなかったんです。今なら惚れるのに残念だったですよ、本当に。 しかし先生は男前だ、お帰りは気をつけて!先生もお元気で!」
すらりとして長身、言葉もきれいで、いつも似たようなことを仰る。要は褒めてやるからさっさと用事を済ませて帰りなさい、という風にも聞こえて、さすがだと思う。
よく面倒を見られている息子さんと、同行の看護師がくすくす笑いながら聞いている。
今日は明治生まれの女性から多めに褒められて疲れが和らいだ。それにしても彼女たちの存在は非常に貴重だ。お会いしてお話できるのを幸せに思う。
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| 樹下美術館隣接の庭のミヤコワスレ | 同じにヒメサユリ(乙女百合) |
この雨は嫁の涙か介護の家
連日冷たい雨に降られている。
先週、今週と在宅介護が始まったばかりのお宅への訪問があった。「大変ですね」とお嫁さんに声を掛けると、わかりますか、と言って二人とも突然ぽろぽろと涙をこぼされた。時と場所が違う二人に同じ涙。
先週のお宅ではおばあさんの足が不自由になって失禁も頻繁に始まった。しかしどうしても私にオムツを替えさせてくれない、とお嫁さん。下着や蒲団が汚れていると思ったら、あっという間にいくつも褥瘡が出来てしまった、と。
そして昨日のお宅では、おばあさんの認知症の様子を話しているお嫁さんが言葉に詰まった。「おばあちゃん自身、親の介護などほとんどしなかったのに、貴方にはああしろ、こうしろと言うのでは」、と話してみた。みるみるお嫁さんの眼が真っ赤になって涙がこぼれた。
しばしば介護の家でお嫁さんたちは涙をこらえている。始まったばかりではなおさらだろう。しかしもう一人辛い人がいるのだ。不自由になったご本人(おばあさんたち)だ。この認識は円滑な介護のためにとても大切だ。私たちは常に二人のバランスを考え、当事者たちがうまく近づき合うように配慮しなければならない。
全ては 「困ったことがあったらケアマネや私たちに何でも相談してください」としっかり告げることから始まる。最初のお宅にヘルパーさんが、次いで介護ベッドが入り、大至急で訪問看護が始まった。昨日そのお嫁さんが薬を取りに来られた。
「私にもオムツを替えさせてくれるようになりました」とお嫁さんの少々ほっとした顔。
「何かと便利になりましたが、お金が掛かるのも事実ですね」と私。
「本当にその通りです」
「しかし、オムツを替えれば床ずれはどんどん直りますから訪問看護は早めに終るでしょう、あせらないで」と足した。
いずれの介護も始まったばかり、これからも色々なことがあると思う。しかしどんな事態にも方法はあろう。私も精一杯支えたいと思う。特に始まりでは話を聞いて、時には涙してもらうのも私たちの立場かもしれない。
ナニワイバラ、より白く
降ったり止んだりしながら長雨の気配となった。寒暖に揺さぶられ風邪の方が増えている。
先日の晴れ間、妻が仕事場の車庫に懸けたナニワイバラが満開だった。

今日夕方の雨を恨みながら花は白さを増したように見えた。
あたりで田植えは終り、弟が帰った
朝から風雨に見舞われた日曜日。昼過ぎ宮城から来ていた弟一家が帰った。弟は「フォルテシモな豚飼い」を書いて以来面白い酪農家に加えて面白い文士の趣を漂わせ始めていた。
彼独特の風土感覚と養豚法が話題となり宮城県知事などとも面会したらしい。昨夜の食事では昨今の芸術背景の浅さを嘆き、ペンネームや続編などの戯れ言をのたまって楽しかった。豚飼いの家の若い姪たちは、テレビもゲームも無く団らんと本で育ったので天使のようだ。それがいきなり私のスキを突いてくるので油断できない。
樹下美術館のまわりは田植えの後、まるで湖と化した。しばらくは最も良い季節が続くだろう。
頸城野の田面に浮かぶ樹下の舟 さきくあらまし三歳(みとせ)旅して
sousi
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