樹下だより
倉石隆が遺された画集、パウル・クレーの芸術 そしてパイプ
昨日は倉石隆の遺品の一つ画集世界素描大系Ⅰ~Ⅳを記載致しました。本日は同じく遺品からパウル・クレーの画集(展覧会図録)を氏が使われたパイプを入れた写真で紹介させて頂きます。

パウル・クレーの芸術 1993年 愛知県美術館・中日新聞社発行。
268作品をも掲載する画集は名古屋、山口、東京を巡回した展覧会図録。
倉石氏愛用のパイプは木靴の中。
つねに出発する画家、パウル・クレー(1989年 -1940年)。伝え、現し、批判し、感覚し、訴え、試み、克服し、残す、、、。そして表現も多様ですが一貫されたのは休みなき活動です(ナチスの時代を除いて)。最も多い年の制作は1000点をゆうに超え、ガーゼや新聞にも描いたといいます。
当カタログの鋭敏な作品には触発の力があり、素朴な作品には心慰められます。
ところで樹下美術館のホームページにご来館者の「お声」が掲載されています。ある方の以下の「お声」にパウル・クレーの名が出ていました。
「戦前後の高田のことをタイムスリップして懐かしく、レンブラントを想起させられた倉石隆先生、パウルクレーの色の奥様。食糧困難の学生時代、大町中のK先生とお邪魔したことなど 次々湧いてきて尽きません。なんと美への心の栄養を頂けたことか。唯々感謝あるのみです。
上越市 男性」
パウル・クレーは多くの人に愛されたのですね。この本も来春3月開館からカフェに置かせて頂きます。
倉石隆が遺された画集、世界素描大系Ⅰ~Ⅳ そしてルノアールの素描から
このところ齋藤三郎に続いて倉石隆氏の図録の作業をしています。40数点の油絵とともに素描(デッサン)も掲載を予定しています。
氏は素描が大変得意で、太平洋美術学校時代に毎年表彰されていた、と奥様からお聞きしました。
今日は倉石隆の遺品で以下のデッサン集を取り上げ、図版にあるオーギュスト・ルノアールの作品に関連した事柄を少々記したいと思います。
世界素描大系Ⅰ~Ⅳ 昭和51年第3刷 講談社発行
函サイズ縦横奥35,5×28,8×5,5㎝
下の写真は当画集の「第Ⅲ巻フランス13世紀ー1919年」からルノアールの1ページ。
第Ⅲ巻には50余人の画家による229作品が掲載されている。
ルノアール(1841-1919年)について11作品があります。
上の写真は下記作品のデッサンです。
「ブージヴァルのダンス」 ボストン美術館 179.1cm×96.0cm 1883年制作。
当作品はルノアールのダンスの三部作の一つです。他に「都会のダンス」「田舎のダンス」があり、両者は同じサイズでオルセー美術館に並んで展示されているそうです。
「ブージヴァルのダンス」の女性モデル、後のシュザンヌ・ヴァラドンはルノアールの恋人といわれていました。ヴァラドンはまたサティ、ロートレック、ドガ等にも愛された恋多き女性です。
ヴァラドンはモーリス・ユトリロを生みます。ユトリロの父はルノアールではないかといわれましたが、公にはされませんでした。ルノアールに画才を発見されたヴァラドンは画家になります。
過酷な運命に翻弄されたユトリロの展覧会は一昨年新潟県立近代美術館で開催されました。
●それにしましても「世界素描大系Ⅰ~Ⅳ」は見応えのある大著です。来春から樹下美術館のカフェに置かせて頂きます。後日、倉石隆が遺され樹下美術館が収蔵している他の画集についても掲載致します。
皆様の「お声」 そして希望
●樹下美術館ホームページの上段に「お声」のコンテンツがあります。樹下美術館の館内に5冊のノートを置かせていただいていますが、皆様からいただいたノートの感想を半期ごと年2回掲載させて頂いています。
このたび平成23年7月1日~12月28日分を載せました。昨年よりも2倍も多くご記入頂きました。市外、特に新潟市の方が増えて目を見張りました。
「感激した」「癒された」「元気になった」「また来たい」「また来ました」、「知人・身内を連れてきたい」、と好意的な感想が多く、非常に励みになります。今後も見えない所も磨いて常に“Ever Green”を心がけたいと思います。
今年は東北の津波、原発事故、母の逝去など様々な出来事がありました。享年96才の母にはもっと聞きたい話もありましたが、老後をいっしょに過ごせて幸せだったと振り返っています。
●震災では近しい親族3家族が仙台と南三陸町に住んでいました。身が震える思いでしたが幸い生き逃れることができました。家族は戦時下の如き困難に助け合って対応し頑張っています。
樹下美術館窓口の募金箱には9633円の浄財が寄付されていました。真に有り難うございました。これを二万円にして、年開けに日本赤十字に寄付させていただきます。
●原発は常軌を逸する規模で時空を越える被害と課題をもたらしました。日本は愛すべき小さな緑の地震国です。遅きに失しましたが、震災で自爆するような悪夢を内包する原発からは完全撤退すべきではないでしょうか。
●経済が全面失速し、かつ失敗が許されなくなった世界。兵器を捨てて互恵の国へ。まご子を思いながら世界は時間をかけてこの一点に向うように思います。一部ではもう始まっているのかもしれません。寒波は一旦下がったようです、静かな大晦日となりました。
12月28日、今年も有り難うございました そしてDream
本日12月28日、樹下美術館は今年の営業(?)を終了しました。早いものでいつしか4年を終えたことになります。
樹下美術館らしく静かに過ぎましたが、お陰様で今年は昨年より2割多くのお客様にお見えいただきました。皆様には心より感謝申し上げます。
Dream:The Pied Pipers & Ernie Feli
曲のほぼ半分が全音符、とてもゆったりした曲。
学生時代から好きだった曲Dream。ザ・パイド・パイパーズのDreamは、女性のメロディーを男性が三部の中低音で支えます。そのため倍音の層が厚く、豊かなハーモニーが響きます。こうしてYou Tubeではじめて見た彼らの映像は1940年中頃~50年代のものでしょうか。
Dreamのメロディーは単純ですが、コード進行はかなり高度です。それを非常に丁寧かつCozyに歌い、冬にぴったりですね。クラリネットのバンドももっぱらコーラスを引き立てて、さすがです。
さて来年は開館6年目、収蔵図録はまだ完成しませんでしたが、もう少しです。第二の長い受験勉強中という感じです。
展示作品はもちろん、大橋秀三さんの建物、お茶と庭、食器と椅子、いくつかのイベント。来る年もどうかそれぞれに樹下美術館をお楽しみください。
本年はまことに有り難うございました。
サイレント&ホリー
今朝雪が降ったが日中は静かに晴れた。習慣レベルとはいえイブらしい澄んだ感じの日だった。午後、朝日池周辺を回って美術館へ行った。
朝日池の入り江で過ごすコハクチョウは雪と白さを競うが如くだった。ツグミやスズメなども撮った日の夕食はローストチキン。妻は上手く焼いたが、沢山鳥を見たので正直憐れみを禁じ得なかった。
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今年の樹下美術館はイルミネーションを止めて庭の三基の灯りを閉館まで一時間点けている。灯りは暮れる頸城山脈とともに静かだった。樹下美術館も鳥や山脈の如く自然でありたいと思っている。
田んぼのへりに車を留めたらヒシクイ(多分)が降りた。
水かきのオレンジ色が可愛い。
キカラスウリとカマキリの巣。高さは60㎝くらい。雪は平年並みか?
米山水源カントリークラブの近くで。
樹下美術館のクリスマスローズ。
ほとんどは早春に咲くが一輪だけ雪中で咲いている。
キムブーさん、パパ、ママ、今年もあり難うございました。
齋藤尚明さんの陶板額と銘々皿
過日上越市、髙田の遊心堂さんで齋藤尚明さんの作品展があった。今日、そのとき求めた銘々皿セットと額入りの陶板が届いた。
茗荷の花の陶板額は非常に爽やかで、紺と金縁の額装も申し分無かった。季節になったら家の玄関に出したい。一方白磁の銘々皿は来春から美術館のカフェで御抹茶のお客様に使うつもり。皿の白磁は真っ白でなく、淡く青磁の色を出している所がお菓子や食べ物に馴染むんだ、と思った。
尚明さん、良い作品を有り難うございました。
司修先生 第38回大佛次郎賞受賞!
12月18日の当地朝日新聞朝刊の文芸欄は一面6段抜きで第38回大佛次郎賞決定のニュースを伝えました。受賞者は司修氏!6人の選考委員は絶賛でした。
受賞対象は「本の魔法」(司修著 著者自装 2011年6月15日 白水社発行)。めったに出来ない著者自装が司先生には沢山あるのです。また私の手元の「本の魔法」は8月10日の第2刷ですので、人気ぶりが嬉しいです。
わずか一ヶ月前11月17日午後、樹下美術館で「雪国の画家 倉石隆」をご講演いただいたばかりでした。深く感動し印象も鮮やかなうちに大佛次郎賞とは、これ以上ない慶祝ニュースです。私たちまでおめでとう、と言われました。来年1月27日帝国ホテルで賞の贈呈式ということでした。
「本の魔法」はかって装幀したおびただしい本の中から15冊を選び、装幀完成までの事々が書かれています。それぞれ15の章については藍、朱、闇、銀、灰などと色のタイトルが付され、画家ならではの感覚と手法です。
恥ずかしいことにのろのろしている私は50pほどしか読んでいません。しかし装幀に拘わる間の作家とのやりとりは例えは悪いかもしれませんが、互いが医者と患者であるようにも見えます。道程では本を読み込み立場を何度か入れ替えながら深く到達点を探り合うのです。
氏の装幀は“ひりひりするような”(選考委員の一人船橋洋一氏選評)作業、とも述べられました。
完成した本はすぐに旅立ち、作家とはお別れです。先生はどれだけ多くこのようなことを繰り返されたことでしょう。痛むほど心込めたのですから年月が経つと、本と装幀者は懐かしげに再会することがあるのかもしれません。

受賞の本(左)と最近頂いたお葉書。
今回は2回目のご来訪でした。来年もどうかまたいらして下さい。
あんなに神経をすり減らしておられるのに、お会いする先生はとても優しくお元気です。鍛え抜かれた方なのだと思います。
先生、これでいくつ目の人生が始まるのでしょう。どうかどうかお体を大切にずっと長くご活躍ください。
※4日間休校した小学校の胃腸炎。休みの間、課題が沢山出ていて元気が出始めたお子たちは忙しかったらしい。本日まだ新規発症が数名あったということ、まずしっかりお休みして欲しい。
齋藤三郎の雪輪紋蓋置 静かな染附(そめつけ)
冬を迎えて樹下美術館に齋藤三郎の小ぶりで珍しい作品がやってきた。茶道具の一つ蓋置(ふたおき)」。蓋置きはお点前で窯の蓋や柄杓(ひしゃく)を置くのに用いられる。主に竹で造られるが、時には金属や焼き物も使われる。
円形の六華である雪輪紋は家紋にあり、小紋として着物にもあしらわれる。集まっても散ってもよしの上品な紋様だ。

雪輪紋蓋置。 縦横5.8×5,5㎝
藍色を発色する顔料・呉須(ごす)で描かれた染附(そめつけ)の色が静か。
「對庵席開記念 高陽 陶齋造」の裏書き。對庵という茶室の席開き記念として関係者に贈られたであろう作品。昭和20代~30年代の様態だが、どこの茶室記念だったのだろう、調べてみたい。高陽は三郎の窯の名、風船窯とも言う。
このように突然作品が入って来て、図録に加わる。あせる気持ちを鎮めつつ、図録刊行は来年5周年の記念出版とすることにした。どれだけ伸びれば気が済むのか、自戒めいた毎日が続く。
医師会報の表紙 個人に支えられる個人美術館
毎月発行される新潟県医師会報。その11月号の表紙を樹下美術館が飾っています。写真を投稿して下さった方はある病院小児科の先輩医師で、長い間とてもお世話になっている方です。好意的なコメントもお書きいただき感謝に堪えません、有り難うございました。
樹下美術館が表紙の新潟県医師会報11月号
学術、医政、随筆、情報などでおよそ60ページ、毎月発行される。
個人美術館を支えてくださるのは個人の皆様、ますますその有り難みを実感しています。
今日は庭のあちこちにある枯れ草を刈りました。節電ということで例年のクリスマスイルミネーションは中止にしました。代わりに午後4時から閉館5時の一時間だけ庭の灯りを点けることにしました。
司修先生有り難うございました。
樹下美術館の年間イベントは限定されている。本業もあってご期待に沿えず申し分けない、といつも思っている。
恵まれた晴れの日の昨日午後、司修先生の講演会「雪国の画家倉石隆」が無事に終わった。充実のひと時だった。
倉石隆は、大らかな優しさによって司さんご本人はじめ、多くの画家達に敬愛され、周りにはいつも人が集まったという。
芸術作品に込められた作家の道程、人間や父母への避けがたい葛藤と思慕。優しさが代償している悲しみなど、倉石隆を通して芸術家を突き動かす原初的事象(私たちにも共通するもの)が日常の言葉で述べられた。
講演はいつしか私たちの深層も触発し、感動の一時間となった。
聞き終えて自分自身、倉石隆を飾れる幸運と司氏のえにしをあらためて有り難いと思った。
ご来場の皆様、まことに有り難うございました。
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