樹下だより

今年の齋藤三郎(陶齋)は「陶齋の赤」です。

2016年3月1日(火曜日)

暖冬とはいえ昨日から小雪まじりの寒さが続いてます。
いつしか3月に入り、今年の開館15日が近づきました。

先日、今年度の倉石隆展示「倉石隆の朱色」をご案内
致しましたが、本日は齋藤三郎の「陶齋の赤」をお知ら
せ致します。

さて焼き物で赤を得るために鉄を主成分とする釉薬
(うわぐすり)が多く用いられます。
ベンガラ(紅殻)と呼ばれる酸化鉄です。

1
真っ赤な地に野ばらを金彩で描いた壺。

2
冬の風物詩唐辛子を描いた大きな皿です。

5
陶齋のシンボル的な赤々とした椿です。
平成10年頃、この作品と出会って美術館を決心しました。

 

鉄は焼く温度などで黄色、赤、褐色、黒などに変化します。
陶齋はモチーフのイメージによって色を使い分けました。

4
褐色がかったざくろを搔き落としの技法で削り出しています。

 

また赤系として陶齋が苦労して会得した辰砂(しんしゃ)が
あります。
これも血色のように濃厚なものから薄いピンク系まで多彩
です。
陶齋は後者の辰砂を得意としましたので今回の展示に混
ぜました。

 

3
ジョッキーは品良く親しみ易い辰砂です。

今年の陶齋はこんな風におよそ20点を展示致します。
「倉石隆の朱色」の油絵とあいまって、小ぶりな樹下美
館の館内は赤々とした暖色に彩られることになりました。

1

2

開館の頃はどんなお天気になっているのでしょう。
どうかお楽しみにご来館下さい。

 

苔を剥ぐという庭仕事 寒風の庭のお茶、前線通過。

2016年2月21日(日曜日)

植えたり、撒いたり、除草したり、掘ったり、囲ったり、
庭仕事は色々。
そんな中、一昨年から苔を剥ぐことが加わった。
石や樹木だけの庭なら苔は風情として欠かせない。
だが草花の場所では栄養を奪うのでとても歓迎できない。

1
昨日の作業前の様子。

樹下美術館の苔はハイゴケとスギゴケの二種類ある。
ハイゴケはふわっと生えていてるので取りやすいが、
スギゴケは一筋縄には行かない。
小さくとも一本一本に細い根があり、深く入りしっかり
土を掴んでいる。

園芸用スコップではとても駄目で、今年は小型のシャベ
ルを水平に使って突っつき、土ごと剥がした。

 

2
昨日に次ぐ作業を終えて。
スズランやアヤメの場所で、昨日本日の計3時間位
で半分まできた。

 

3
終るころ寒風を避け、美術館の裏手でお茶。

 

4
夕方の美術館と雲。カフェの雪囲いはまだ外せない。

 

5
たちまち変わった近くの水田の空。、
黒い雲が近づくと急に風雨が襲い、
7℃の外気温が一挙に4℃まで下がった。

さて春はそう簡単には来てくれない。
一方で、一旦来たならどんどん行ってしまう。
そんな春のために、お客さんを思いながら寒
中地味な庭仕事を続けるのは案外楽しい。

倉石隆の朱色 高価なバーミリオン。

2016年2月19日(金曜日)

「“鮮やかなバーミリオンやブルーは高いので
買わないのでしょう”、と夫に冗談で言ったこと
があります」。
かって倉石隆夫人から聞いたお話です。

そのバーミリオン(朱色)は最も高価とされれる
絵の具の色です。
例えば一本500円が平均の油絵具チューブのシ
リーズがあったとすると、バーミリオンは3500~
4000円なのです。

高価なのは顔料の主成分である硫化水銀が貴
重なためです。
そこで後年バーミリオンhue(ヒュー)と称する安
価な合成色が作られ、一方で普及することにな
りました。

朱色
バーミリオンの見本色

だが本物のバーミリオンは非常に鮮やかで魅力的
だといいます。
水銀をふくむためチューブは他にない重みまである
そうです。
色か価格か、画家たちにとってバーミリオンは一種
悩ましい絵の具だったということです。

さて戦争で東京から郷里高田に疎開した倉石氏は、
窮乏のまま1950年に再上京を果たしました。
当初の作品には暗調のモノクロームがよく見られます。

21
「北の人」 1953年 27,0×21,8㎝

 

26●
「詩人」 1964年  89,9×73,0㎝

冒頭の夫人の言葉はそんな時代の会話だったのでしょう。
しかし時を経て鮮やかな朱系の絵が登場するようになり
ました。

28
「室内の裸婦」 1973年 162,1×130、5㎝の
大作。多くのバーミリオンが使われたことでしょう。
冒頭の夫人の一言で発起したとも思われませんが、生活
に一定の余裕が生まれたことも想像されます。

 

48
「鳩」 1984年 31,8×40,9㎝

いずれにしてもあざやかな朱色は雪国出身者の
倉石隆にとって憧れの色だったのかもしれません。

ここに氏による一枚の作品があります。

57
「朱色のチューブ」 制作年不詳 45,5×37,9㎝
WNのマークから英国の名メーカー、ウインザー&ニュー
トン社のチューブで、貴重なバーミリオンのようです。

まるで恋人を描く様に丁寧に描かれ、倉石氏の朱色
への深い愛着がにじみます。

3月15日の開館が近づきました。
今年の倉石隆のテーマは「倉石隆の朱色」です。
小さな樹下美術館のわずか5点ほどの展示です
が、どうかご覧下さい。

2

強い風と気温上昇で雪が消えた。

2016年2月14日(日曜日)

風は強かったが暖かく、午後の気温は10℃を越えていた。
午後3時近くに雨が上がった。
暖かさで美術館の雪は一日にして殆ど消えている。
ヘレボルスニゲルの花は全容を現していた。

 

004
そもそもクリスマスローズは花期が長い。
3月15日の開館まで何らかの姿を保つかも知れない。

庭はほかに沢山クリスマスローズがある。
蕾を膨らませていたり、完全に開花している花もあった。
 
 
005
卵型の蕾がじっと春を待っている。

 

008
もうすぐ開こうという蕾。

 

009
こんなに開いていた株もあった。

 

001
南側の土手から採れたフキノトウ。

やせ気味の場所の土を掘り肥料をくべた。
もうすぐ春、開館まであとひと月となった。

樹下美術館2016年のイベントのお知らせです。

2016年2月2日(火曜日)

昨日に続いて今年のお知らせです。
樹下美術館の催しとして以下2つのイベントを行います。
どうかお気軽にお楽しみください。

5月14日(土曜日)午後6:30より
「手回し蓄音機でSPレコードを聴く会」
会費大人お一人様500円
中高生お一人300円

10月8日(土曜)午後6:30より
「チェロとギターの夕べ」
・チェロ 竹花加奈子さん
・ギター 蓮見昭夫さん

会費大人お一人様2800円

3
クラシック、童謡、古いポップスなど色々掛ける予定です。

4
2013年以来三年ぶり、スリリングな演奏が期待されます。

お申し込みお問い合わせは
お電話
025-530-4155
受付は3月15日から始めさせて頂きます。
お気軽にお問い合わせください。

今年展示の陶齋は「赤」、倉石隆は「朱」  101才の方から届いたガーベラ。 

2016年2月1日(月曜日)

律儀に時は過ぎ、2月4日の立春が近づきました。
数日ちらほらと雪が降り、一帯の積雪は2、30㎝程度。
路面の雪はすっかり消えています。

さて3月15日の開館を前に今年の展示テーマが決まりました。
小規模な美術館で毎年テーマを決めるのはやや大変です。
しかし作家の実力あるバリエーションのお陰で続ける事が出
来てとても有り難いと思っています。

1
齋藤三郎(陶齋)は「陶齋の赤」
氏の色絵には赤が多く用いられ、その色は雪国の忍従を
突き抜ける情と強さを秘めているようです。

 2
倉石隆は「倉石隆の朱色」です。
およそ氏の絵画はモノクローム(単系色)で描かれます。
そのことは作品の深みや見やすさに繋がり、朱色系は白・黒と
同じくらいよく用いられました。

両氏が住んだ世界は異なりますが、確たる個性の上に豊かな
変化を展開させた点でとても似ています。
華やかな多色を用いなかった点でも共通していました。

暖色。
その色は雪国出身者が見た赤々とした炭火の色かもしれません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

午後ある患者さんから誕生日のお花が届きました。
101才を目前にしたやはり2月生まれのおばあさんからでした。

誕生日祝いの花
心づくしがにじむ黄色のガーベラ。

皆様のお声 ささやか美術館のカフェ&庭。

2016年1月20日(水曜日)

樹下美術館では館内に何冊かノートを置かせて頂き、
皆様に自由にお書き頂いています。

恒例ですが、頂いたコメントを樹下美術館のホームページに
お声」として昨年後半の部を掲載させて頂きました。

 

160120
本日午後、強風の大潟区四ツ屋浜。明日から数日は穏やかになるようです。

 ノートのなかから下記のように幾つかのコメントを拾わせて頂き下ました。

上越にお嫁に来て数年、、、。
カフェ巡りの好きな私が大満足の場所に
出会えてとてもうれしいです。
今日はここを紹介して頂いて参りました。
ありがとうございます。 また 来ますね。

母を連れて来たいと思っていましたが、
今日、来る事ができました。
きっと、気に入るだろうと思っていましたが、
それ以上の様子でした。うれしくなりました。

五年前に来ました。
当時は娘がまだお腹の中、今日は4歳の娘として
家族で参りました。
家族三人で、見る窓外の景色も素晴しい。
楽しい一日になりそうです、ありがとう。

堀口大學詩集に収められている「月夜」という詩が、
ついさっきみた「黄昏のピエロ」に重なってくる。
絵に涙は描かれていないが、
なぜか泣いているように見えてきた、、、。

齋藤先生の作品を鑑賞して、
民藝運動の時代のことが偲ばれました。
倉石先生の作品もすてきですね。
富山県滑川市 男性

大阪市大阪城の近くから車を走らせて参りました。
昨日二十三時発、翌十時着。お茶うまし!
大阪市

以上にコメントの一部を紹介させて頂き、
まことに有り難うございました。
小さな樹下美術館は展示もカフェも庭も食器も本も、
皆様の赴くままにご利用頂ければ嬉しいのです。

「美術館のあるカフェ」、「美術館のある庭」
「庭のあるカフェ」etc、いずれでも有り難いのです。

今年の開館3月15日までもう少しです。
あらためて本年もどうか宜しくお願い致します。

 


「An Affair To Remember」(映画「めぐり逢い」のテーマから)
ピアノ: エミール・パンドルフィ

雪中で頑張る「ヘレボルス・ニゲル」というクリスマスローズ。

2016年1月13日(水曜日)

昨年11月末から蕾を膨らませ、
12月には開花した一株のクリスマスローズ。
ほかのほとんどが眠っている中で一人咲いている。

暖冬のせいもあろうが、そもそも原種に近い性質を持った株らしい。
原種とはニゲル(正式にはヘレボルス・ニゲル)と呼ばれていた花で、
ヨーロッパが原産、それも北海道、樺太級の緯度の生まれのようである。
開花期も12月前後で、寒さに強いわけだ。

さて昨日からの雪が15㎝ほど積もった。
かってこの花に雪や風を案じて袋を被せようとしたが、止めていた。
本日7、8個の花を雪面から顔を出して頑張っていた。

007
開花して一月半が経った。
傷みが出始めているが全体は自然な感じ。

あたりの雪を少し掻くと中からいくつかが顔を出した。

009
隠れていた花はしゃんとしている。

同じニゲルでも当庭のものは殆どが2、3月に開花し始める。
上掲のように本来の性質通り早く咲くのはこれまで経験がない。
もしかしたら昨年求めた株の最初の花かもしれない。

袋を被せたり心配したが、雪の中でも傷まずにいる。
むしろ雪の中の方が暖かくて風も当たらず、問題ないのか。

014本日の樹下美術館です。
屋根の雪がカフェの所に集中して落ちるのです。
そこだけ板囲いをしています。

花ひと株でも色々心配しなければならない。

今年のご来館有り難うございました ルーベン・ゴンザレス キューバの原発。

2015年12月25日(金曜日)

曇り時々雨の本日12月25日、樹下美術館は2015年の営業を終了しました。
振り返りますと、昨年より20パーセントほど来館者様に恵まれましたこと心から感謝いたします。
増加に新幹線の恩恵は見当たらず、もっぱら皆様の口コミと一部サイトの寄与ではと思っています。

これまで年間お一人も見えない日が数日はありましたが、この二年間一日もありませんでした。
当館はもともと賑わう場所ではありませんが、
猛烈な雨嵐の日でもどなたかにお出で頂いたこと一種奇跡のように感謝しています。

本日の最終日は9名様のご来館でした。
ここ三日続けて名残のお茶のみに寄られた方がいらっしゃてとても感謝しています。

中高年の方々、お若いカップル、お一人様、幼いお子様連れ、車椅子の方々、、。、
読書、美術鑑賞、息抜き、癒やし、庭の見物、お仲間のおしゃべり、書類書き、観光の寄り道、、、、。
小さな樹下美術館を思い思いに使って頂きましたことを有り難く思っています。

今年は懸案の収蔵図録編集で、作家さんの大切な事実が幾つか分かりました。
また時代の盲点として残っていた作品も新たに加わりました。
長くご心配をお掛けしてますが、今ようやく迷うわずに最後の編集を行っています。

樹下美術館の過ぎた9年はあっという間でした。
10年目となる16年度の開館3月15日もあっという間にちがいありません。
今年のご来館まことに有り難うございました、来る年もどうか宜しくお願い申し上げます。

 


亡きキューバの名宝ルーベン・ゴンザレスのピアノで「Como siento yo」。
今ある物を大切にしてきたキューバ、ピアノも古そうですね。

緒に就いたキューバとアメリカの国交回復は、来年あたり是非大きく前進してほしい。
その節には原発の輸出入など絶対にせず、良きキューバの文化が継承されますように。
(ソ連の主導で開始された原発建設はカストロ首相の英断で中断されています)

SPで聴いたヴァイオリンの巨匠たち 今夜の月は今年の見納めか。

2015年12月24日(木曜日)

日中は10℃前後で推移し曇りがちの木曜日。
今年の樹下美術館も明日までとなり、お世話になった音楽好きの方たちが集まり蓄音機でSPレコードを聴いた。

エルマン、ジンバリスト、クライスラー、ハイフェッツ、、、。
バッハからイングランド民謡まで、20世紀の巨匠たちの名演が次々によみがえった。
最後は良い声のエディー・フィッシャーで「ジングル・ベルス」が掛かった。

006最後に掛かったジングルベルス。

お客様も次々にやって来られ聴いたりおしゃべりしたり、賑やかなひと時だった。
何人かの方が来年5月8日(土曜日夕刻)のSPコンサートは是非来たいと申し出られた。

 

029夕刻の一時、見え隠れした満月に近い月。

明日は満月だが寒波が待っているらしい。
その後年内は好天が望めそうも無く、これが今年最後の月になるかもしれない。

月を惜しんで映画ピクニックのテーマから「ムーン・グロウ (Moonglow)」

懐かしいフランク・チャックスフィールドの演奏です。

 

2025年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

▲ このページのTOPへ