ジャコメッティの細い「歩く男」が。
たとえばAという人のAらしさを表現してみる。これは様々なジャンルとレベルで可能だ。およそ子どもの時から私たちもこのようなことに親しんできたように思う。
ではAに見られる人間らしさを表現するのはどうだろう。前者の裏腹でもあろうが命題は突然地味に変化し、困難の予感がしてくる。こちらの人間観まで問われるからだろう。
これらの事を生涯痛々しいほど追求した一人がアルベルト・ジャコメッティ(1901年~1966年)ではないだろうか。彼の作業には陣痛を伴う出産(誕生)のイメージが浮かぶ。
いつしか彼の人間についての彫像は台座の上に小さな棒のようなものとして現れる。それがさらに細くと望んで次第に背が高くなっていった。

妻が見ている細い人間を作り始めた頃のジャコメッティ(我が心の芸術家たち:著者/ブラッサイ 翻訳/岩佐鉄男/ 1987年12月24日(株)リブロポート発行より)。自らの作品を触る彼はうっとりとして幸せそうです。この本は樹下美術館のカフェにあります。
哲学でなく実体への固執。同じ場所に住み、晩年は手術と苦悩とタバコによって衰弱し、服の中に浮いているようだったと目撃されたジャコメッティ。ピカソやサルトルなど多くの人が彼を愛した。
そんな彼の細いブロンズ作品「歩く男」が先日ピカソを抜いて芸術作品の彫刻分野で競売史上最高額をつけた。3日、ロンドンはサザビーズでの出来事だった。この時代、一つの作品が1億430万ドル(約94億円)で落札されるとは驚くべきことだ。彼は同じものを6体制作したらしい。芸術(また芸術家)の深淵と壮大を思った。
樹下美術館の展示作家、故倉石隆氏はジャコメッティを愛し影響を受けた一人でした。氏の人物もしばしば細く描かれますが、作者に感応した独特の存在として魅力的です。
![]() 倉石隆作裸婦 |
![]() 倉石隆作「男(O氏の像)」 |
タブノキに雪
上越市大潟区四ツ屋浜に大きな樹がある。古老からタブノキと聞いていた。旧国道(浜線)脇のすぐ海側にあり、前が空き地のためとてもよく見える。長年の西風を受けて東にヒラリと枝をはねている。
クスに似た種類の常緑広葉樹ということ。当地ではほとんどクスを見ないと先輩に聞いたことがあるが、タブはどうなのだろう。いずれにしても松が多い一帯でこの広葉樹の風格は大変見応えがある。
樹齢は分からないが、旺盛な繁りからまだ壮年期かもしれない。見ていると地域の人の「大切に」という思いが伝わる。雪の日のタブは幽玄な力感があり、あたりに緑の気を放っている。
昨日のタブノキ |
雪が降った今日のタブノキ |
晩冬の食卓
どうにかお天気がもった一日。美術館の雪を見に行った妻が土手からフキノトウを沢山採ってきた。いつもならあらかたとられてしまう所、今日はまさかの先駆けで採れたらしい。それにしても早いこと。
宮城県に居る「フォルテシモな豚飼い」の弟から時期のいいマダラが送られきた。それでフキノトウの天ぷらにアラ汁、味噌デンガクの夕食となった。春冬混淆の卓、明日からお天気の方は雪模様。
「外で食べるより私が作ったほうがおいしい」という妻。我が家はほとんど外食をしない(ほんの時たまの外食を妻はありがと、と言う)。今夜の天ぷらの中に私が苦手な白子があって、妻だけこっそり食べたらしい。
春待ち椿
気温上昇と雨で中旬に降った雪は大方融けた。今日はみぞれ混じりの日。傷みながら椿が咲き、多くの蕾が開花を待っている。
みぞれの後の椿
恥ずかしながら先日の椿の絵が進んだ。分量が少ないせいかやや楽に感じた。いい加減なのかなあ。
その後の椿のボタニカルアート
描いていると、この花を愛した陶齋(齋藤三郎)の気持ちがよぎる。これから陰影・葉脈・汚れ落としなど細部を失敗しながら進んでみます。蕾が少々大き過ぎますが、葉が小さい椿ということで許して頂ければ。
青空
今日の青空は格別だった。雲がいいと余計空がきれいに見える。雪雲の上にこんな青い空があったんだと、まじまじ見上げた。冬至から一ヶ月を過ぎて陽が高くなりつつあるのも分かった。
午後4時頃の月。 Blue moon,You saw me standing alone ♪
椿の蕾のボタニカルアート
昨年の冬は3年振りの絵筆でなんとか白花デドロビュームを描いた。その直後に小さな紙に椿の蕾を描き始めたものの中断していた。
このたび上越医師会報の表紙を描く番が回ってきた。2ヶ月に一回刊行される冊誌の表紙を4,5人の医師で順番に担当している。幸いモチーフにした椿の蕾が庭で膨らんできた。今回は続きを完成させて勘弁してもらうことにした。
2月上旬が締め切り。B5版で絵の分量も少ないのでなんとか間に合わせたい。恥ずかしながら昨年の白花デンドロビュームと同じく完成まで何回か掲載して緊張を維持してみたいと思いました。お目汚しで恐縮です。
今日は50分かけてここまで。右側中段の葉を少し大きくしたいのですが。
つづきは後日掲載致します(2月16日のノートに掲載しました)。
二人の杉 堀口大學と倉石隆
以前倉石隆氏の油絵「杉林」を書かせていただいた。その後、昨年暮れに倉石氏の奥様とお話しする機会があった。そこでまた杉のことが出た。
隆氏はこんな風に話されたことがあったという。「詩人はいいなあ、堀口大學さんのように杉は寂しいと言えて。おれたち画家が杉は寂しいと言ったらキザにしか聞こえない」、と。 倉石氏のぼやきには詩人と画家の感覚の共通とともに、方法の違いが語られていて興味深かかった。
ところで、大學の「杉は寂しい」という言葉は詩集「雪国にて」にあった。昭和21年1月~7月末の作品による小冊の中にわずか二行の詩。戦争に負けて半年、火も湯も乏しい冬の叙情だった。
※ちなみにこの頃、4才前後の私は引き上げ船を待って惨めな家族とともに旧満州(現中国東北部)にいました。薄暗い大きなテントとぬかるみの日の配食が脳裏にあります。皆様はどうしておれらましたか、私事で恐縮でした。
「杉の森」
たださへさびしい杉の森
まして山里 雪の中
世界を駈け、スペインでマリー・ローランサンに恋した裕質の詩人はいまや雪の越後の山里に。細る体を雪よりつらい寂しさが襲う。しかし苦境に光明を見ようとする大學の意識は本書の後書きにも現れる。

雪国:昭和22年7月7日 柏書院発行。
あとがきの中段に次の文があった。「終戦後、詩興しきりに動き、わたくしは珍しく多作だった。外は雪、家は煤(スス)からなるこの白と黒との牢獄は、わたくしの肉体をさいなんだが、詩興をたすけるよすがとなった。」 妙高山麓関川の仮寓にて 堀口大学。
父を偲んで 藤巻瓔子さんの作品展
昨日は雪も上がり、上越市立高田図書館で藤巻瓔子さんの作品展の最終日を見ました。瓔子さんは斎藤三郎氏(陶齋)のご長女です。お忙しい日常の中で制作され、心込められた多くの作品が展示されていました。
作品は水彩、パステル、日本画、木彫りと、とても多彩でした。 中でも特に気に入ったのは珠沙華。花と背景の深さに強く惹かれました。作品のモチーフに陶齋が好んだ草花が随所に見られ、お父様への熱い思いが伝わりました。
籠に蕨文木彫り(瓔子さん作) |
色絵籠に蕨文(陶齋作) |
おおらかで気品あふれる染め付け窓絵四季文水指(陶齋作)
作品展のサブタイトルに「父を偲んで」とある通り、会場には陶齋作品も数多く展示されていました。樹下美術館は陶齋の常設展示をしています。しかしこの日の会場で初めて目にする様式の優品も多く、あらためて才能の大きさに驚かされ、勉強になりました。
雪の図書館
早いもので陶齋が亡くなって30年が経とうとしています。雪国の優れた芸術家であった父への思いあふれる作品展。見終わって外へ出ると、雪の匂いが胸いっぱいに広がりました。
雪止んで鳥、そして猫
雪降り続いた数日間は鳥の姿が途絶えていた。今日は晴れて、部屋から鳥たちが見えた。特に可愛いメジロがカメラに写って嬉しかった。現れた野良ちゃんも雪原の野性を思い出している様子だった。
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鳥の動く姿は愛らしく、佇む姿は高尚に見える。明日はせっかくの日曜日。半日でもお天気が持ってくれますように。
雪の往診
降らなければ吹かれ、吹かなければ降られる。数日、夜は静かでひどく降った。
ここ上越市大潟区は海沿いなので、雪は少ない方だ。それでも1メートル近くの積雪となり、道幅は極端に狭くなった。すれ違いは人も車も神経を使う。幸い今日は往診が無かったがこれから少々心配だ。
冬と言えば30年ほど昔の大雪の夜、遠い里で脳卒中の発症があった。めざす集落へは車で入れず、暗い雪原を新雪に埋まりながら家を探した。当時の救急事情はまだ悪く入院は翌日となった。その後この方は25年ほど健在された。今は残されたおばあちゃんを時々訪ねるが、お家の辺りはなつかしさが漂う。
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| 一昨夜の車 | 今朝、隣で妻の車が埋まっていた |
4WDが普及する前の大雪はタクシーを使うことがあった。ある日タクシーが雪に嵌って動かなくなった。降りて運転手さんと共にスコップを握り、板や毛布を敷いて車を救出した。また私自身が脱輪したときは農家の耕耘機に助けらたこともあった。そして皆さんに押してもらったことも、、、。
昔は色々あったが、色々させていただいてためになった。
雪は白魔か
一昨日の晴々した海が嘘のように一転して激しい雪に見舞われた。雪中の昼間、二件の往診をして夜は介護保険の審査会に出た。審査には25人分、150ページの資料を読み込んで行く。午後7時からの審査会出席は気がもめた。
多分私が一番遠い。早めに出たがいつもの高速道路は封鎖されていた。国道に戻ると立ち往生の車が何カ所かで道をふさいでいる。 なかなか進まない車中で審査開始の時刻が過ぎて行った。事務局に携帯をかけると、もう一人委員が到着していないという。5人のうち4人揃わないと会は不成立になる。
早く着かなければ待っている委員に申しわけない。結局30分以上の遅刻、通常の3倍時間が掛かって着いた。お一人はついに欠席となったが会は成立した。
いつもながら真剣な審議を終えると、みなで帰路の無事を心配しあって別れた。次回は一ヶ月後、はたして雪はどうなっているだろう。
なんとか出席して帰宅。
初海
午後から新型インフルエンザの集団予防接種があった。小3までの児童に三人の医師で当たった。頻回の予防接種を受けているせいか、泣くお子さんが少ないように感じた。
時代を反映しているのだろう、子どもたちの服装が少し地味になったように思った。しかし皆すらりとして足が長く、ブーツが似合って格好良かった。
のびのびと波を打ち返す海。
夕刻、今年初めての海へ。荒れるだけ荒れた後でおだやかな表情だった。例のリューボは姿を消していた。あんなに高い所までまた波が来たに違いない。今どうしているのだろうか、再び現れるなら凄いことだ。
雪中の樹下美術館
樹下美術館が冬期休館に入っておよそ二週間になります。3月開館まではあっという間にちがいありません。今年は当館の満三周年、ささやかな記念行事と大切な図録の刊行に向けて気ぜわしくしています。
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ひとしきりの荒天が一段落してほっとしています。庭で数株のクリスマスローズが開花していました。多くが早春の開花を待って冬をこらえていました。見ていただける春を心待ちしているようでした。
お茶の話題ばかりで恐縮ですが、今夜はコーヒーを。仕舞ったままだったロイヤルドルトンのアールデコで飲みました。アールデコのトリオによるコーヒーにはオリエント急行のイメージが浮かびました。
お茶の時のTVで石川遼、辻井伸行両氏とお母さんのことを見ました。洞察と優しさの母性の力。こうした根源的なことから新しい時代が開かれるのかもしれません。先は長くとも将来に希望を感じました。
二代陶齋のお茶碗で濃茶
今日も終日荒れ模様、濡れた雪があちこち乱雑に溜まっている。
今夜は正月の〆とて濃茶を飲んだ。茶碗を二代陶齋(斎藤尚明さん)の鉄釉。お茶は裏千家宗匠・坐忘斎好み「緑毛の昔(りょくもうのむかし)」(宇治・上林春松本店)。御菓子は患者さんに頂いた上越市安塚区の秋山菓子店の壽羊羹を。
菱垣文が刻まれた端正なお茶碗
行儀を考えずにテーブルで練った。湯を注ぐと茶の香りが高く登り、滑らかな濃茶になった。茶の緑をしっかり受け止めた茶碗。服すると明日からまた頑張ろう、という気持ちになってくる。
※ちなみに緑毛とは長生きをした亀の甲羅尻に生える毛のことで、目出度さの象徴と聞いています。
今夜、間もなくNHKで「日本の名峰 ふる里の富士」がある。妙高山が出るそうなので是非見たい。それに鳥海山も。
ほとんど旅行をしていない自分は、せめて鳥海山を見に行きたいと思っている。できれば母の故郷佐賀県へも。
猛烈に吹かれて
早朝、猛烈な風音で目覚めた。激突するような風で家が揺れる。普段ヒューヒューという樹がシューシューと不気味な音を立てている。遠いはずの海鳴りが耳元まで迫っていた。
冬の季節風に慣れてはいても、これほどの風は珍しい。古い家に寝ていたので心配で起きると妻も起きてきた。一瞬、中越沖地震の時とダブった。
電車が止まったために、部活の子を車で送ってきたとスタッフの一人に聞いた。暴風の高速道路は怖かったらしい。ワクチンにきた高校生は運休を口実に模擬テストをサボれたと苦笑いをした。
往診で見た鐘楼がしゃんとしていたのは、さすがだった。降らなければ吹かれる。みな無事で良かったが冬の気象には鍛えられる。
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