樹下だより

木の香りの久保田建築 大橋秀三展 柿崎海岸。

2016年10月27日(木曜日)

大潟区の久保田建築の社長・久保田さんは小学校の同
級生。
私の住居も樹下美術館も久保田さんに建てて貰った。

氏は長く地域との交流貢献に熱心で、工場・事務所に接続
して「住みつぼひろば」を設け、イベントや展示会向けに開
放されている。

このたび30日まで同ひろばで「上越の建築家 大橋秀三
家展」が催されていて、出かけてきた。
大橋氏は樹下美術館の設計責任者として本当にお世話に
なった。

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↑久保田建築の外観。
緑に沿ってエントランスと「住みつぼひろば」がある。
中は古材を実にうまく使って和める雰囲気を出している。

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ひろばの看板。

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展示会の案内プレート。

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エントランスの壁面はこどもたちが作った楽しげな木工細工
があしらわれている。

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エントランスの先に開放的な円形のベンチ。

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↑上記の場所から左は事務所、右に展示会場。

大橋秀三展は氏が設計した建築物の設計図、
詳細な俯瞰図あるいはスケッチとともに模型
が展示されている。

 

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樹下美術館の図面や写真とともに模型があった。
樹下美術館は来年開館10周年、「誰の設計ですか」と
皆様によく尋ねられる。

 

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手書きによる詳細な3Dスケッチ。
大橋氏は感覚と手筋の良い人で、樹下美術館の時に
「格好良い建物にしましょう」と何度も仰った。
建築家としてフランクな姿勢を有され、ひらめきと
ダンディズムのセンス溢れる人だと思っている。

展示を観た後、棟続きの事務所に向かってみる。

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↑木材モザイクの壁面から木の香りが溢れる。

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事務所への途中のシンプルな坪庭は、限定された空間を活か
してなんとも気持ちが良い。
こちらは久保田氏のデザインらしいが、とても上手く作ってある。

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事務所入り口。

ノーベル賞受賞者の多くは幼少を濃厚に自然と親しみなが
ら過ごしている。
本日、大橋展で久保田建築を訪ねたが、創造された木の家
は自然の力が内包された素晴らしい環境であることをあらた
めて知らされた。

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これから当地の気候は荒れて、そして雪になる。
晴れ間は貴重で、本日よく晴れた午後休診の日、展示会の後
柿崎海岸へ足が向いた。

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日向ぼっこのカモメ、向こうに鉢崎。

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今日も千鳥と出会った。
過去何度も書いたがこの鳥をみると母を思い出す

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暮れてゆく海岸。

秋の日は短く早く、ついて行くのに少々骨がおれる。

 

えんぴつの会の皆様 今を生きる子どもたち。

2016年10月25日(火曜日)

風強く時々雨が吹きつけた日、文芸に勤しまれるグループ
えんぴつの会から14名の皆様が来館されました。

児童文学作家、杉みき子さんを囲みまた薫陶を受けられて
いる皆様。
大潟区の小山作之助の足跡を訪ねてその墓所や、大潟町
中学校にある資料室を見学、同区の「魚蝶」で昼食の後、お
寄りになりました。

作之助の孫の一人が当館の展示画家倉石隆の夫人であり、
作之助の弟直次郎の孫の一人が不肖館長であることを写
真と共に説明させて頂きました。

作之助兄弟と孫

左・明治20年頃の作之助と直次郎兄弟。右・倉石氏アトリエ
における2002年の夫人と小生(資料としてお配りしました)。

齋藤三郎の陶芸では氏の鮮やかな赤、シンボル的な椿、味
わいある文字、年代に於ける作風や父との交流などをお話さ
せて頂きました。

作品を観た後でカフェでお茶になりました。

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カフェで。

皆様の熱心な視線、生きた個性、軟らかな人柄、なによりグ
ループとしてのまとまりに強い印象を受けました。

カフェでは松本竣介や司修の話題も出て私自身楽しませて
頂きました。

杉先生は何度も来館されていますが、とてもお元気で、美味
しそうにお茶とケーキを楽しみ、談笑されました。
皆様のますますのご活躍をお祈りし、ご来館に感謝いたしま
す。

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本日、午後1時から園医をしている保育園の健診に赴いた。
春より明らかにみな大きくなっている。
疾病や事故などを克服しながら成長するこどもたち。

この子たちは良い大人になるためではなく、かけがえの無い
今を無心に一生懸命に生きいている、それだけでいいんだ、
とふと思った。

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強風の空に大きな白鳥が飛んでいるような夕刻の雲。

 

秋更けて積雲のマリンホテルハマナス、太宰治、野菊、ホオズキ。

2016年10月24日(月曜日)

青空に沢山の積雲がゆっくり移動していた爽やかな日。

 

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午後の陽に映える上下浜のマリンホテルハマナスと近くの草地にあし
らわれた石のオブジェ。
過日の100キロマラソン当日、この場所で写真を撮ったが寒かった。

 

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樹下美術館のカフェで太宰治の本。
この文庫本を反復して読んでいて、短い「ヴィヨンの妻」は8回
読み終った。
また頭の体操と銘打って「ヴィヨンの妻」の冒頭2ページを暗記し
たが、これを寝る前にそらんじていると面倒くさくなるのか、すぐ
に寝つく。

 

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樹下美術館の庭、秋の名物の一つリュウノウギクとノコンギク。
朝夕の寒さに色冴えてくる。
白いリュウノウギクは8年前に東京の叔母が、富士山が見える山荘
の庭から贈ってくれた。4,5株だったものが樹下美術館で沢山増えた。

 

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美しい網目が現れてきたホオズキ。
8月はじめ近くのホームセンターで買い、下旬に庭に移した。
来年も沢山実を付けてくれればいいが。

秋になって作品をご覧になる方が増えている。
明日は15名様の団体が来られ、少々の説明をさせて頂く
予定。

最近当館に収まった陶齋の小さな湯呑の大きな世界。

2016年10月20日(木曜日)

最近樹下美術館に齋藤三郎(初代陶齋)の湯呑が収
まりましたので、数種を選んで掲載致しました。

いずれも草花の趣を生かし、器の小さな面を一杯に
使い、デザイン性に優れ、背後の大きな自然さえ感じ
させるものでした。

華やかなモチーフを鉄絵の具のさび色や、呉須の青に
よるモノトーン調で描く。
個々の風情を知り、表現に結びつける感覚と手筋の良
さなど、陶齋ならではの品だと思います。

 

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↑鉄絵芙蓉文湯呑。
涼しげな花を器全体を埋め尽くすように伸びび伸びと
描いています。

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↑染め付け露草文湯呑
花を囲むように絶妙にあしらわれた葉、この花の特
徴を良く知っている作者ならではの洒脱な図柄です。

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↑染め付け水仙文湯呑。
強い筆致で描かれた水仙はビュッフェのタッチを思
わせます。
ダミ筆(輪郭の中を埋めたり、背景を塗りつぶしたり
する時の太めの筆)の青が早春を伝えています。

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↑鉄絵秋草文湯呑。
ススキに掛かる半月が渋い鉄絵の具で描かれ、薄く
掛けられた白のうわぐすりが微妙な月明かりか夕靄
を現しています。
尾形乾山の趣を有した洒脱な一作ではないでしょうか。

湯呑は陶齋ワールドが凝縮された器でありましょう。
それらは日々手に取られるものゆえ、一層心込めら
れたかのようです。
お身内によると生涯何万個単位もの湯呑を作ったの
ではないか、ということ。
樹下美術館にも4,50の湯呑があり、カフェで飲食
後に、お番茶のサービスとして用いています。
いつか湯呑展ができれば、と楽しみにしています。

この度は、いずれも昭和20年代中頃から30年代中
頃までの作品でした。

本日電車で五泉と栃尾から吟行に来られたお二人
様、作品からカフェそして丁寧に庭を見て頂き有り難う
ございました。
良い句が出来ましたか。

頂いたギンナンが混ぜご飯に 原発と県知事選。

2016年10月15日(土曜日)

雲を見ることもなく晴れわたった土曜日だった。
本日殆どのお客様が男性だった、と聞いた。
美術館に、カフェに男性、きっと様になっていたことでし
ょう。

明日日曜日は当館には珍しく50名近く団体さんの予約
が入っている。
半数ずつ一時間を置いて来館され、作品鑑賞のあとカフェ
に入られるということ。
絵画ホールに8名様用のテーブルを出してお茶のサービ
スをする予定。

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↑美術館裏手の農道。草がセーターに着替えたようだ。

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↑その路傍でひときわ明るく咲いているミゾソバ。
小さなお菓子のようだ。

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↑日暮れ時、庭の落ち葉を掃き終えると大きな月が明るい。
明日が満月らしい。

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↑昨夜頂き、妻が剥いていたギンナンが混ぜご飯になった。
頂いた生姜は味噌漬けになって向こうに、恥ずかしながら
左はスズキのムニエル、汁椀は鶏肉とカブのすまし汁で
した。

さて明日は新潟県知事選挙の投票日。
知事おろしと新聞の同調、終盤に於ける知事を巡る不可
解な動勢、心ない中傷、、、今夜の澄んだ月と反対に選
挙は汚濁の印象を深めた。

最大イシューと考えている原発は、一旦ことが起これば
広大な周辺地域で故郷を捨てさせる底知れぬ破壊力を
有している。

軽々に安全の担保を言うほど、原発の恐ろしさへの無理
解が露呈する。

事故に備えてヨウ素剤を手許に置かなければならない生
活など歴史的暗黒であり、事あれば離郷の止む無きなど、
何と無慈悲な施策であろう。

40年間真面目に納税してきた結果がこれだとは、涙が出
てくる。

もともと新潟県は穏やかで海山川田園に恵まれ、創造的
工芸、技術の盛んな県だった。
人々が安心して励み暮らせ、喜んで人が集まる県であるこ
とを心から祈り願っている。

充実したコンサート。

2016年10月8日(土曜日)

今夕50余名のお客様をお迎えして「チェロとギターの夕
べ」コンサートが終わった。

チェロの竹花加奈子さんとギターの蓮見昭夫さんの演
奏は素晴らしかった。
蓮見さんのギターが深いチェロにメランコリックに時に激
しい切れ味をもって絡み、迫力あるデュオが体現されま
した。

バッハの貴重なパストラーレはじめクラシック曲およびお二
人それぞれのオリジナル曲は、いずれも込められた心とと
もに鮮やかな陰影をもってホールを満たし私たちの胸に響
きました。

 

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↑開演前のひと時。

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↑熱のこもった演奏。

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当日、真っ赤なドレスの竹花加奈子さん
カルメンからハバネラとセギリーディァ、そしてリベルタン
ゴ、あるいはご自身のスペイン時代を回想するオリジナ
ル曲など、情熱的なプログラムにドレスがとても合って
いました。

 心満たされた小雨の夜、暖かなお客様に恵まれ、幸せな
音楽会でした。

それにしても樹下美術館のホールは弦楽器を良く響かせ
る。

演奏者のお二人様、本当に有り難うございました。
また遅くまで会場設営に関わって頂いたスタッフの皆様お
疲れ様でした、とても感謝いたしてます。

台風上陸と新潟県 リンドウが賑やかになってくる。

2016年10月5日(水曜日)

昨日のノートにこの度の台風18号が新潟県に上陸
すれば1951年観測以来初めてのことになる、という
ニュースのことを書きました。

これを聞いて、へえー、沢山台風が来ていたのに一
個も当県上陸が無かったのか、と少々驚きました。

ところがその上陸の仕方ですが、何処にも寄らずに来
るいわゆる初上陸か、一度他で上陸した後、一旦海に
出て再び上陸する場合も含めるのか、区別が付きか
ねていました。

調べてみると初上陸、再上陸陸含めて、新潟県への台
風上陸は観測史上まだ無いということでした(新潟気象
台)。

ところで島に台風が来た場合、「上陸」とは言わず「通
過」と呼ぶらしいのです。
つまり佐渡では通過になり、本土側の新潟県なら上陸
というわけです。

ついでながら上陸の呼称は九州、四国、本州、北海道
に限って使われ、沖縄ように島からなる県ではどんな
に沢山来ようと、みな通過と表現されるらしい。
また小さな半島を横断する場合も通過が使われるよう
ですが、能登半島や紀伊半島、房総半島のように大き
な半島の横断は通過か上陸かはよく分かりませんでし
た。

18号は近いうちに温帯低気圧として消滅するらしいの
ですが、現在22時すぎ、木立や空には風の音が強くな
ってきました。
18号は台風として果たして新潟県に上陸するか否か、
その前に被害など無いことを祈っている次第です。

 

161006夕焼け

今夕の四ツ屋浜、台風がもたらす暖かな風が吹き始めていました。

 

トクサとリンドウ
数年来リンドウがトクサの場所を気に入って増えている。

 

リンドウの花
そのトクサの中のリンドウ。

トクサには芝や雑草が入り込んでいます。しかし雑草を取ろ
うにもびっしりトクサが生えていますので、中に入りにくいの
です。
本日は茂ったトクサの一部を抜き、そこを足場にして一本一
本シラガを抜くように短時間でしたが、雑草を取ってみました。

再び苔も増えましたので、昨年のように鎌でそぎ、フルイに掛
けて処理する予定です。
根気がいりますが、行った分だけきれいになりますので、張り
合いです。

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午後、ご来館されたお二方が展示をご覧になり抹茶を飲まれ
ました。カフェで名刺をお出しすると、驚かれた表情をされまし
た。
名刺には名の他に茶名を入れてありますが、男性が「私の茶
名も同じです」と仰り、こちらがびっくりしました。
お客様は表千家、小生は裏千家茶道。
長野県からお見えになったということ、奇縁に出会えて嬉しか
ったです、真に有り難うございました。

※茶名:茶道の稽古を重ねて段階を踏み、一定の期間がくる
と家元から茶道上の名が贈られる。
私は亡き渡辺宗好先生の元へ昭和62年から15年通った段
階で頂戴した。
お茶の導きを頂いた宗好先生にあらためて深く感謝申し上げ
ます。

現在23時を過ぎましたが、急に風が強まりゴーゴーと「なりふ
り構わぬ」吹き方となり家も揺れて心配です。
これは温帯低気圧ではなく、台風そのものです。

良く晴れた10月最初の日曜日。

2016年10月2日(日曜日)

10月最初の日曜日の日中は気持ち良く晴れた。
午後やや遅くカフェに寄り、身辺や近隣にカメラを向けた。

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↑晴れ間を見て急いで仕上げたのか、女郎蜘蛛の真新しい巣が
見られた。
角度によって美しく光る。

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先日記載した時は沢山いたクロアゲハ(多分)の幼虫が二匹だけ
残っていた。
近くでサナギになったのか、心配した金柑は丸坊主を免れたようだ。

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↑秋の日射しが爽やかだったカフェ。

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↑赤とんぼが沢山見られ、これからもっと増えるのが楽しみ。

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↑コスモスはまだ初々しい。

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↑最後の刈り入れに忙しいコンバイン。

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↑暮れなずむ高架線を行くほくほく線電車。

昨日長袖、本日半袖とめまぐるしい気象に、衣服を出したり引っ
込めたり。
大きな台風がこちらを向いていて、明後日あたりから当地も影
響を受けそうだ。

初めての皆様、ご常連の方々、ご来館に感謝いたしてます。

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女子ゴルフ4大メジャー競技会の一つ、権威ある日本女子オープ
ンゴルフ選手権競技でアマチュアの選手が年間億の賞金を稼ぐよ
うなプロたち抑えて優勝した。
本選手権史上初のことが、わずか17才の高校生によって成し遂げ
られた。

アマチュア、若者、恐るべし。

10月8日のプログラム 秋の日射しと空。

2016年10月1日(土曜日)

次週土曜日10月8日のコンサート「チェロとギターの夕べ
のプログラムが演奏者さんから届きました。

チェロ:竹花加奈子さん、ギター:蓮見昭夫さんのデュオ。
虫の音聞こえる秋の宵にふさわしいロマンティックなプロ
グラムです。

チェロギタープログ
スペインで学ばれた竹花さん、ドイツで学ばれた蓮見さん
の息の合った一種エキゾチックなデュオは樹下美術館のホ
ールを心地良く振るわせることでしょう。
個性にじむお二人のオリジナル曲も大変楽しみです。

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さて雨降り9月でしたが、この数日は日射しが戻っています。
夕刻のいっとき、秋の芝生に木漏れ日が落ちる時間の静けさ
に心休まります。

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↑今夏の日照りで苦労した芝生がやや落ち着きを取り戻した。 
これから肥料と土をくれる秋の作業が待っている。

カフェの図書の入れ替え その3

2016年9月29日(木曜日)

去る9月21日からカフェの図書につきまして、新たに追加する
ものを掲載しております。
本日は25日に続いて三回目最終回のご案内です。

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↑「芸術新潮 特集 ジャコメッティ」
芸術新潮2006年7月号 新潮社
倉石隆氏の奥様から「主人が影響を受けた芸術家の一人」と
して何度かお聞きしたアルベルト・ジャコメッティ。
当書は2006年、神奈川県立近代美術館で開催された展覧会
に合わせて刊行された雑誌特集。
超人的なこの芸術家自身や評論家の言葉は難解なものが多い
が、誌上の作品から直接的に人なつこさや親近感を覚える。
作品は存命中から人気があり、現在のオークションでは想像を
超える高値がついてその都度話題になる。

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↑「スリップウェア」
編者・誠文堂新光社 誠文堂新光社 2016年1月23日発行。
スリップウエアは古くからヨーロッパや中国ほか世界各地
にあった陶器だが、18世紀、産業革命を期にすたれ、一
部のコレクターの手許に残るだけなっていた。
1913年にスリップウエアが載っているイギリスの古陶器
の書物を若き日の陶芸家富本憲吉と美術家柳宗悦が偶
然別々に目にして魅惑されたことから、日本に於ける本陶
器への熱い注目と憧憬が始まった。
すぐさま在日中の英国の版画家バーナードリーチおよび
同時代の陶芸家濱田庄司、河井寛次郎らの知ることとなり、
自らも渡英して調査研究と収集を行なった。
彼らはいずれも当時起った民芸運動の中心的人物たちで、
洋の東西を越えて存在する素朴かつ一種斬新な芸術に触
発され、それぞれの作風に生かすに至った。
富本と共に陶芸の研究を重ねていたリーチは帰国後、窯を
築き、途絶えたスリップウエアを、和の味わいも加えた独特
の作風で現代に蘇らせた。
本書は英国を中心に各国の作品およびリーチや日本の現代
の作家のものなどを詳細に紹介している。
暖かみと面白みを有した器は鑑賞でも良いが、肉などの煮
込み料理を盛ったらどんなに素晴らしかろう、と心惹かれる。
※富本憲吉は当館齋藤三郎の二人目の師。

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↑「新潟の絵画100年展」
編集構成・新潟市美術館 1989年9月1日発行。
開館5年目に開催された明治、大正、昭和の新潟県出身者
および新潟県をモチーフにした130名の作家の224作品が
網羅された画期的展覧会の図録。
あらゆるジャンルと個性的な画風が見られて興味深く、また
意識せずとも地元感が横溢する一冊。
上越市出身では、小林古径、矢野利隆、飯田春行、牧野虎
雄、賀川隆、舟見倹二、堀川紀夫、富岡惣一郎、柴田長俊、
矢島甲子夫、串田良方らとともに、樹下美術館の倉石隆も三
点が収載されている。
県外人として齋藤真一、寺田政明ほか幕末明治初期の画家
チャールズ・ワーグマンらの新潟県に関する作品も見られる。
また県内の洋画黎明期の人、小山正太郎による「春日山より
米山を望む」(1899年)の古色溢れる頸城野が美しい。

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↑「會津八一の法帖」 中央公論美術出版 昭和54年2月25日発行。
法帖(ほうじょう)は主に書家の作品をまとめた中小サイズの
書物。
自ら作成したものと、後人が編さんしたものなどがある。
当書は會津八一の書が7つの範疇にまとめられ、それぞれ
の末尾に読みが丁寧に記載されている。
7月にたまたま東京から樹下美術館を訪ねられたお客様か
ら贈呈された八一に関した書物のうちの貴重な一冊で、感
謝を禁じ得ない。
八一は樹下美術館の陶芸家・齋藤三郎と親交され、氏に
「泥裏珠光(でいりじゅこう)」の号を与え、高田で書き入れ陶
器の制作を共同で行い、東京で発表している。

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↑「写真集 私」 著者・濱谷浩 湘南文庫1991年3月28日発行。
戦前戦後、縁あって上越市に住んた世界的な写真家を、関係
者などが撮影したアルバム。
都内のダンディな青年、軍を撮る軍服姿、上越地方におけ
る山間の撮影の一コマ、高田での幸福な結婚、雪国、裏日
本、表日本、それぞれの風土に密着して仕事をする本人が
写っている。
大磯の新居の正月、床の間に着物姿であらたまる夫を写し
たのは朝(あさ)夫人。
後年夫人永眠の際の氏の様子は真に辛い。
だが晩年に訪れたアメリカでタイツのゴーゴーガールと踊る
写真には、自己の全てを出し切って生きる渾身の芸術家魂
を垣間見る事が出來る。
※写真集「福縁随所」では齋藤三郎を撮影している。

以上この度の入れ替え図書14冊を紹介させていただきました。
当館の二人の展示作家、齋藤三郎と倉石隆両氏や上越市や新
潟県にゆかりのあるものなどを交えて選んでみました。
ご来館の節にはお手にとり、どうかお楽しみください。
樹下美術館のホームページの「本」の改訂は来週中にさせてい
ただきます。

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